SANZUI vol.10_2016 spring

美匠熟考

Photo / Anna Hosokawa

Number:019 Toe Shoes森下洋子のトゥシューズうらわまこと(舞踊評論家)

トゥシューズが考案されたのは、今から約200年前のフランス。これによってバレリーナたちは、重力から解放され、さらに高みを目指すことができるようになった。その後、さまざまな工夫が重ねられ、バレリーナにとっては、単なる用具でなく、身体の一部ともいえる存在になっている。もちろん、これをわがものとするには、足の爪を割り、まめをつぶすという、文字通り血のにじむ努力が求められる。

わが国が世界に誇るバレリーナ、森下洋子。彼女とトゥシューズの付き合いは60年を超える。彼女ほどこの意味を知り尽くしているものはいない。たとえば、『白鳥の湖』の情緒に満ちたオデットと妖艶なオディールを踊り分ける時も、ロミオにたいするジュリエットの思いを演じ上げる時も、それはつねに彼女とともにあり、彼女の意のままに観客に感動を与え続けている。



Number:020 Master Tapeザ・ピーナッツのマスターテープ矢内康公 (株式会社キング関口台スタジオ録音部・ マスタリングエンジニア)

CDよりも格段に良い音質で聴くことができる「ハイレゾ」。この1967(昭和42)年にレコーディングされたマスターテープから、ハイレゾ音源を制作しました。ザ・ピーナッツのレコーディングに携わったエンジニアにも話を伺い、当時の録音環境を考えて、今の技術なら、どのように録音できるのかを想像しつつ、マスターテープの音を聴きながら、機材を調整して音を補正し、元の状態に近づけていきます。当時は、一発録りが多く、歌い、演奏する方も、録音する方も、緊張感のある中でレコーディングしていたと思います。

ハイレゾ化には、アーティストたちの歌や演奏を、より良い音で後世に残すという意味もあります、アーティストの歌や演奏を残す唯一のマスターテープ。録音された音が、今でも再生できるのは、先輩方が、しっかりと保存、管理していたお陰ですね。


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