SANZUI vol.04_2014 early summer

ロングインタビュー 坂本龍一

Photo / Ko Hosokawa   Text / Eiichi Yoshimura

ぼくたちは、音楽家にとって困難な時代を生きているのかもしれない

メディア・アートの時代に生きている

坂本龍一、62歳のこの音楽家は70年代に東京芸術大学でコンピューターを利用した作曲方法を研究し、やがてソロとして、あるいはYMOの一員として、つねにテクノロジーと格闘、あるいは寄り添ってきた。

プロの音楽家になってもテクノロジーから受ける刺激がつねにモチベーションになってきたという坂本龍一が、いま見つめるテクノロジーと音楽の関係。そして音楽を超えてアートとテクノロジーの融合をも見据えた現在の心境と活動について訊いた。

――最近は音楽に加えて、アート関連の活動も多いですね。

もともとはドイツ人アーティストのカールステン・ニコライと知りあったのが大きなきっかけかな。10年ぐらい前に彼と音楽のコラボレーションをやることになった。彼は一方では美術作家でもあるので、YCAM(山口情報芸術センター)で作品の展示をしたんです。それを観にぼくもYCAMを訪れるようになった。それから縁ができて、2012年にYCAM10周年記念として1年間にわたる音楽とアートというテーマでのキュレーションをやって、今年は札幌国際芸術祭。たしかにアートの仕事が続いています。10代のときから現代美術はとても好きでしたが、その道を目指したわけではないのに、ここにきてアート関係の仕事を頼まれることが多くなってきた。

――自伝では、芸大では音楽学部だったのにもかかわらず、美術学部に入り浸っていたとあります。

芸大に限らず、美術学部のほうがおもしろい人間がいるんですよ。あの頃はアートという概念もどんどん拡がって、当時はポップ・アートとかコンセプチュアル・アートといって、必ずしも絵がうまいことがいいアートに繋がるわけではないという時代に突入していました。いまも続いているその流れの中で、現代美術をやっている人がとくに絵がうまいわけではないし、逆に市井にいる絵のうまい人が必ずしも現代美術ですばらしい作品を作れるわけでもない。そこがおもしろい。

――坂本さん自身もメディア・アートのいくつかの作品を発表しています。

真鍋大度さんらもそうだと思うんですけど、いまはアートとテクノロジーと音楽を組み合わせたメディア・アートの時代だと思います。ぼくももともとコンピューターを使って音楽を作るということをYMOの頃からやってきたわけだし、テクノロジーやアートとは馴染みが深く、相性はいいんです。絵がうまいわけでも美術の才能があるわけでもないんですが...。



21世紀のテクノロジーと音楽家の悩ましい関係

――テクノロジーとヴィジュアルと音楽を結びつけたインスタレーションを作っている一方で、坂本さんの音楽はどんどんコンピューターを排除した生演奏や即興に比率が遷っているように見えます。

そうですね。いまでも音楽を制作するときには日常的にコンピューターを使っているのだけど、ライヴで演奏するときには使わなくなってきている。なんでだろう? みんながステージでコンピューターを使うようになったからかな。Macを使って最新のプラグインを使っておもしろい音を出す若い人はいっぱいいるから、その真似はしたくない。せっかくピアノが弾けるんだから何百年も使われてきたピアノという楽器で、「こんなに新しい音が出せるんだ!」という発見をするほうが自分としてはおもしろいんです。

――オーケストラやピアノ・トリオでの活動も増えてますよね。

オーケストラとの共演も、古い楽器であるピアノでいろんな音を出していることとちょっと似てるんです。まだまだ自分がいいと思う音色がオーケストラという編成の中から出てくるんじゃないかなあと思ってる。ピアノ、チェロ、ヴァイオリンのトリオでの演奏もずっとやってきていますけど、そこでもやはりトリオという編成で、自分の従来の曲がまた新しい姿に生まれ変わらないかなと思ってやっています。

――オーケストラやピアノ・トリオのためにこれまでの曲をアレンジし直してみて、あらためて自作について気づかれたことなどあります?

たとえばかつてテクノポップとして書いた曲であっても、オーケストラに編曲しやすい曲もたくさんあって、そうか、この曲はそうしやすいんだなという発見をすることがあるんです。たとえば「ハッピー・エンド」という曲などがそう。だいたい、イエロー・マジック・オーケストラなんていうバンドのために書いた曲だったんだから、そういうオーケストラ的要素がもともとあったんですね(笑)。もともとがシンフォニックなサウンドだった。

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