実演家人格権
実演家人格権は、2002年に新たに付与されました。実演家人格権はその実演家固有のもので、他人に譲渡したり、相続したりすることはできません。また、その実演家が生きている限りは認められますが、亡くなると同時に消滅します。ただし、著作権法では、実演家が亡くなった後であっても、実演家人格権侵害となるような行為をしてはならないと定めています。実演家の遺族は、そのような行為の差止め等を請求することができます。
実演を公表するときに、音楽CDのジャケットや映画のエンドロールなどに自分の氏名・芸名を表示するようあるいは表示しないよう求めることができる権利。
<例えば...>
・音楽CDのジャケットに自分の氏名・芸名を記載するよう求める
実演家の名誉声望を傷つけるような形で実演を変更したり、削除されたりしない権利。
<例えば...>
・音楽CDに収録された自分の歌声を変な声に加工された時、異議を申し立てる
著作隣接権等(財産権)
実演家の財産権は、生の実演、録音物に録音された「音」の実演、映画に録音録画された「映像」の実演、放送番組に録音録画された「映像」の実演(放送実演)それぞれで権利の構成が異なります。
財産権は、実演家人格権と異なり、譲渡や相続をすることができます。
また、保護期間は、実演が行われたときから70年までとなります。
他人が無断で実演を利用する行為を止めたり、使用料の支払いなどの条件をつけて、他人の利用を認めたりすることができる権利
生の実演を無断で録音・録画されない権利。
<権利が働くのは...>
・コンサートが録音されるとき
・舞台での公演が録画されるとき
生の実演を無断で放送・有線放送されない権利。
<権利が働くのは...>
・コンサートや舞台での公演が生放送されるとき
生の実演を無断でインターネット上にアップロードされない権利。
<権利が働くのは...>
・コンサートや舞台での公演がインターネットで生中継されるとき
他人が無断で実演を利用する行為を止めたり、使用料の支払いなどの条件をつけて、他人の利用を認めたりすることができる権利
演奏、歌唱、朗読、落語など、「音」の実演が収録された音源を無断でコピーされない権利。
<権利が働くのは...>
・音楽CDがリプレスされるとき
実演家に無断で録音された音源が放送や有線放送で流されるとき、差止め等を求めることができる権利。
<権利が働くのは...>
・無断で録音されたライブやコンサートの音源が放送や有線放送されるとき
音楽CDや配信用音源などに収録された「音」の実演を無断でインターネット上にアップロードされない権利。
<権利が働くのは...>
・音楽CDに収録された演奏が、動画共有サイトにアップロードされるとき
「音」の実演が収録された音楽CD等を無断で販売等されない権利。
ただし、一度正規に販売等されると、この権利は働きません。そのため、中古CDに対してこの権利を行使できません。
<権利が働くのは...>
・無断で録音されたライブやコンサートのCD(いわゆる海賊版)が販売されたとき
他人が実演を利用する行為を止めることができない代わりに、利用した際に報酬・補償金を請求することができる権利
市販用音楽CD等(商業用レコード)に収録された実演が放送、有線放送で流された場合、放送局、有線放送局に対し報酬を求めることができる権利。有線放送局がテレビ放送、ラジオ放送を受信して同時に有線放送する場合も含みます(ただし非営利かつ無料の場合は除く)。
<二次使用料がもらえるのは...>
・市販用音楽CDに収録された演奏が放送されたとき
IPマルチキャスト放送の事業者が放送対象地域内でテレビ放送やラジオ放送を受信し同時に送信した場合、補償金を求めることができる権利。
<補償金がもらえるのは...>
・IPマルチキャスト放送局が、放送対象地域内でテレビ放送を受信し、同時にユーザーに送信したとき。
音楽CDなどに収録された「音」の実演を録音する際は、実演家等の許諾を得なければなりませんが、個人で楽しむためだけであれば、その必要はありません。ただし、政令で指定された機器・記録媒体に録音する場合、実演家には補償金を求める権利があります。そのため、指定管理団体(一般社団法人私的録音補償金管理協会(sarah))が機器・記録媒体製造業者から徴収した補償金のうち、実演家分を芸団協CPRAが受領し、分配しています。
<補償金がもらえるのは...>
・ユーザーが音楽CDに収録された演奏を音楽用CD-Rに録音したとき。
「映像」の実演
実演家の許諾を得て、劇場用映画などの映画に録音録画された「映像」の実演については、放送実演のような権利は働きません。ただし、サントラ盤のように映画から作成した録音物に関しては、「音」の実演と同様の権利が働きます。
なお、無断で映画に録音録画された「映像」の実演については当然実演家の権利が働きます。
「映像」の実演(放送実演)
放送局は、実演を放送することについて実演家の許諾を得た場合、録音録画の許諾を得ずに、その実演を録音録画することができます。
このように放送局が放送番組に録音録画した「映像」の実演を別な目的で利用する場合には、改めて実演家の許諾を得なければなりません。
そのため、放送局は実演家の許諾を改めて得て、放送番組のビデオグラム化、BS放送局、CS放送局や海外への販売、オンデマンド配信等を行っています。
他人が実演を利用する行為を止めることができない代わりに、利用した際に報酬・補償金を請求することができる権利
放送番組に収録された実演が再放送されたり、ネット局で放送されたりした場合、報酬を求めることができる権利(ネット局でキー局の番組が放送された場合にはキー局に対し報酬を求めることができる)。
<報酬がもらえるのは...>
・自分が出演したドラマが再放送されたとき
有線放送局が、テレビ放送やラジオ放送を受信して、同時に有線放送した場合、報酬を求めることができる権利(ただし非営利かつ無料の場合は除く)。
<報酬がもらえるのは...>
・自分が出演したドラマがケーブルテレビで地上波と同時に放送されたとき
IPマルチキャスト放送の事業者が、放送対象地域内でテレビ放送やラジオ放送を受信して、同時に送信した場合、補償金を求めることができる権利。
<補償金がもらえるのは...>
・自分が出演したドラマがIPマルチキャスト放送で地上波と同時に放送されたとき
放送番組に収録された「映像」の実演を録音録画する際は、実演家等の許諾を得なければなりませんが、個人で楽しむためだけであれば、その必要はありません。ただし、政令で指定された機器・記録媒体に録音録画する場合、実演家には補償金を求める権利があります。