幅広く作曲の手がけて
――服部さんは、お祖父さんとお父さんも著名な作曲家で、ご自分も作曲家なわけですが、お二人を意識している部分はありますか。 それはないですね。親父と同業の仕事するようになってかなりたってから、親父がある程度のクオリティを落とさず50年もやってきたという、その大変さに ちょっと「すげえ」って思うようになったことはあります。
―― 自分とお父さんと比較したりしますか。
親父のサウンドって嫌いじゃないんですよ。小さいころから聞いてますから、大なり小なり似てくるんじゃないですかねえ。
―― じゃあ、お互いに刺激し合ってる?
いや、親父は別に刺激受けてないでしょ(笑)。
―― ポップスやクラシックなど、幅広いアーティストのアルバムのアレンジなどをされてますが、一番最初にやったお仕事は?
さだまさしさんなんです。
―― じゃあ、お父さんのつながりで。 ええ。そういう意味では、僕の最初の仕事は、「七光り」以外の何物でもないと思います。さだまさしさんも、谷村新司さんも、親父がお付き合いあった人から 声をかけていただいたんです。
―― いろんなジャンルで仕事をされてますが、クラシックとポップス、どっちが好きですか。
クラシックはあのころのポップスなので、どっちがっていうことはないんです。モーツァルトの書いたオペラをあのころみんな歌ってたように、いまのポップスも100年後にはクラシックになってる。そういう意味ではポップスもクラシックも、区別がしにくいんです。
―― 作曲の仕事にとりかかるタイミングは何かありますか。
席に座ってさあっていうんじゃなく、最初の打ち合わせをしている段階から、なんとなくその仕事のイメージってしてくるんです。そこからいろいろなことを同時に考えつつ、どうしようかなって考えていくのがいいんですね。何もイメージがわかないときが、難産だと思います。嫌なイメージでもいいんですけど、打ち合わせしたときから何かイメージが出ているといい。
―― ところで、電子楽器の扱いが苦手だと聞いたんですが。
これを松武さんに話すなんて、という感じですが(笑)、僕はシンセサイザーを自分で打ち込んだりはしないんです。でも、シンセは自分にとっては、ひとりの楽器と一緒なんです。自分の書いた旋律をすごくうまいオーボエの人が吹いてくれたら、素晴らしい旋律になる。それと同じで、僕の書いたコードとかフレーズを、シンセでマニュピレーティングしていただくと、僕がもってないアイデアが出てきたりとか、こちらがいったことと何か融合して面白い反応が出てくる。ちょっと「あれっ?」て思っても、相手にいただいたパッドの雰囲気とか音の残り方とか、シーケンスの雰囲気とか、絶対俺はやらないなっていうのが出てくるところに、ワクワクするものがあるんじゃないかなって思うんですよ。
ドラマの音楽と映画の音楽と
―― ドラマと映画では、作曲の意気込みなどは違いますか。
映画の場合は、監督がフィックスしたシーンに、あて書きをしていけますよね。でも、ドラマの場合は、脚本が12話のうち2本しかあがってないとか、シーンが全部撮れてないとかが多い。だから、12話分の粗筋と要所をいただいて、だいたいこういう展開のドラマということで、それに合うであろう3、40曲をつくるわけです。あとは、音効さんがあててってくれる。
――そういうやり方なんですね。
仕事を始めたころは、不本意だったですね。どうして自分の書いた曲をズタズタに切り裂いて、無理矢理はめるのかと思った。ところが、ズタズタに切ったおかげで、こっちが思いもしないすごくいい効果を生むこともあるんですよ。これはすごいと思った。
―― 相乗効果ですね。
ドラマの場合は、オンエアを見るまでは非常にスリルがありますね。だって、たとえば、「王様のレストラン」ていうドラマをやったときは、テーマじゃないつもりで書いた曲が番組のテーマになってしまった。でも、結果的にはよかったんです。そういう意味では、ドラマはスリルとサスペンスがあるんですよ。ドラマの場合は曲を書いたら僕の手を離れちゃうんですけど、あとは音効さんとか監督の意向をへて、なかなかいい効果を生む時ってありますね。
――「新選組」や「のだめカンタービレ」などの音楽をやられると、そういうのに似た曲をみたいな注文があったりはしないですか。
ドラマがヒットすると、僕の曲のおかげでヒットしたわけじゃないのに、やっぱり似たような曲をというオーダーは受けます。
――そういうときって、いや、同じものは書けないって、ことわっちゃうんですか?
さすがに、まだそれはやったことないですね(笑)。でも、自分で焼き直しするのって、なかなか難しいんですよね。