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私的録音録画補償金制度 シテキロクオンロクガホショウキンセイド
デジタル技術の発展・普及に伴う私的使用のための複製の増大によって、権利者が被る経済的不利益を補償するために1992年に創設された制度。
著作権者、著作隣接権者はその著作物等の複製に対し排他的許諾権を持っているが、個人的又は家庭内等の閉鎖的範囲内で使用する目的であれば、使用者本人が複製することは権利侵害にならない(著作権法第30条第1項)。しかし、デジタル技術が進展しオリジナルと同等の劣化しないコピーが作成できるようになると、立法当初想定していた零細な利用を超え、権利者の利益を害する状態に至ったことから、この制度が創設された。
著作権法では、政令(著作権法施行令)で定めるデジタル方式の録音録画機器や媒体を用いて音楽及び映像を録音又は録画する者は、補償金を支払わなければならないとしている(著作権法30条3項)。しかし、私的録音録画するたびに補償金を支払うことは、ユーザーにとって大きな負担となる。そこで、録音録画機器や媒体を製造するメーカーが協力義務を負って、機器等を購入する際に販売価格に一定額の私的録音録画補償金をあらかじめ上乗せし、一括して支払う仕組みが用意されている(著作権法104条の2から104条の10)。
私的録音補償金に関わる業務を行う団体として一般社団法人私的録音補償金管理協会(sarah)が、私的録画補償金に関わる業務を行う団体として一般社団法人私的録画補償金管理協会(SARVH)が、それぞれ文化庁長官から指定を受けている。
株式会社東芝(以下東芝)は、2009年アナログチューナー非搭載DVD録画機器を発売したが、この機器は私的録画補償金支払対象機器ではないとして、補償金を製品の出荷価格に上乗せして徴収する協力を拒否した。そのため、SARVHは東芝に対し補償金の支払いを求めて訴訟を提起したが、2012年最高裁がSARVHの上告を棄却したことでSARVH敗訴の控訴審判決が確定し、私的録画補償金制度は事実上機能しない状況に至った。その結果、SARVHは2015年3月末を持って解散した。