Interview.002
権限制限の一般規定導入について、大林丈史芸団協専務理事に聞く
今年1月、文化審議会著作権分科会において、「権利制限の一般規定」について報告書がとりまとめられた。CPRATALK第2回では、この「権利制限の一般規定」導入の背景、課題やCPRAとしての今後の対応などについて、著作権分科会委員として分科会の議論に参加した大林丈史芸団協専務理事に話を聞いた。
なお、『著作権分科会報告書』は、文化庁のサイトから、参照することができる。
(2011年06月29日公開)
Interview.002
今年1月、文化審議会著作権分科会において、「権利制限の一般規定」について報告書がとりまとめられた。CPRATALK第2回では、この「権利制限の一般規定」導入の背景、課題やCPRAとしての今後の対応などについて、著作権分科会委員として分科会の議論に参加した大林丈史芸団協専務理事に話を聞いた。
なお、『著作権分科会報告書』は、文化庁のサイトから、参照することができる。
(2011年06月29日公開)
大林丈史(おおばやしたけし)
俳優、(社)日本芸能実演家団体協議会専務理事、(社)日本映画俳優協会理事
1942年岡山県出身、東京外国語大学ポルトガル・ブラジル科卒業。67年、俳優座演劇研究所附属俳優養成所卒業、劇団俳優座入団。70年、米国国務省EWC留学生としてハワイ大学演劇科TDIプログラム修了(1ヶ年)。以後「塩見事務所」「(株)番衆プロ」を経て87年(株)コスモプロジェクト創立メンバーの1人として同社所属俳優となり、多数のTVドラマ、映画、舞台作品に出演、現在に至る。主な出演作品に、73年日本テレビ創立記念連続ドラマ「水滸伝」における主役の宋江や、83年映画「南極物語」(俳優、助監督として参加)などがある。
著作権法では、権利者の許諾を得なければ著作物や実演などを利用することができないが、教育や福祉など一定の場合に限って、権利者の許諾を得ずに無断で利用することができる場合を、権利制限規定として定めている。このような権利制限規定について、日本の著作権法は、その利用目的や利用態様ごとに、個別的かつ具体的に限定列挙して定める、個別の権利制限規定の限定列挙方式を採っている。他方、一定の包括的な考慮要件を法律で定め、個々の利用行為が権利制限にあたるか否か裁判所が判断する、権利制限の一般規定による方式もあり、その代表的な例が、アメリカ著作権法の「フェアユース」規定である。批評、解説、研究、調査などのためのフェアユースは権利侵害にならないと定め、【1】使用の目的及び性質、【2】利用された著作物の性質、【3】使用された部分の量や実質性、及び【4】利用された著作物の潜在的市場又は価格に与える影響、という四つの考慮要素を掲げている(アメリカ著作権法107条)。裁判所は、この四つの考慮要素に基づいて、個々の利用行為が権利制限にあたるか否かを判断することになる。
著作権・著作隣接権に関する条約に基づいて、著作権・著作隣接権の例外または制限が認められるか否かを決定する基本テスト。条約の加盟国が、国内法において権利制限規定を導入する際、同テスト(【1】著作物・実演等の通常の利用を妨げず、【2】著作者・実演家等の正当な権利を不当に害しない、【3】特別な場合)との整合性を考慮する必要がある。
当初は、複製権に限って、著作権の基本条約であるベルヌ条約で導入されたが、その後、TRIPS協定、WIPO著作権条約(WCT)により、著作権に基づく全ての経済的権利に、さらにWIPO実演・レコード条約(WPPT)により、同条約でカバーされる実演家及びレコード製作者の権利にまで拡大している。