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民間放送局とテレビ放送の誕生-そして実演家の権利の発展

企画部広報課 君塚陽介

番組制作と民間テレビ放送のネットワーク

(1)番組制作・編成
 テレビ放送開始当時、放送番組の編成は、番組制作の施設や条件が十分に整っていなかったため、中継ものが中心であった。やがて、スタジオやスタッフの拡充、放送機器の改良など制作体制の整備に伴い、中継もの中心からドラマなどのスタジオ番組も登場するなど、多彩な番組編成に変わってきた※8。とりわけ1958(昭和33)年にVTRテープが初めて導入されると、番組制作の手法は一変し、テレビ放送番組は飛躍的に多様化していった※9。
 ただ、テレビ放送番組の保存という面からは、主として生放送により番組制作が行われていたため、フィルムによる作品を除き、番組は保存されておらず、VTRテープが導入されてからも、当時は極めて高額であったため、何度も上書きして再利用していた※10。このため、古いテレビ放送番組には、残っていないものもある。
 テレビ放送の普及に対して、映画産業は不振に陥るのではないかと危惧を抱いていた。1956(昭和31)年、映画会社5社は、劇場用映画をテレビで放送させないとの方針を決めた。しかも、映画会社に専属している俳優がテレビに出演する際には、映画会社の許可を必要として、事実上、映画俳優はテレビ出演ができなくなった(いわゆる「五社協定」)。このためテレビには、アメリカのテレビ映画が、数多く放送され、五社協定に縛られない実演家の出演が増えた※11。
 また、民間テレビ放送の黎明期には、プロダクションがテレビ番組を自主制作したことによって、テレビ放送の発展に大きく寄与した※12。

(2)民間テレビ放送のネットワーク
 現在、民間テレビ放送局では、在京テレビ放送局をキー局、在名阪テレビ放送局を準キー局、その他の地域に所在するテレビ放送局をネット局とするネットワークが形成され、全国番組(ネットワーク番組)とローカル番組とを組み合わせた番組編成が行われている。例えば、キー局により制作された番組は、ローカル局に供給され、ローカル局が放送している。これによりローカル局は、キー局が一括して受け取った収入の配分を受け取り、経営資源とする一方、キー局も全国放送によって、番組セールスの面でも収入増につながることになる※13。
 そもそも、このようなネットワークは、昭和40年代前半に、ニュース報道の分野で形成された※14。1959(昭和34)年、東京放送(TBS)が、わが国最初のテレビニュースのネットワークとして、JNNを発足させている。その後、1966(昭和41)年に日本テレビ系列のNNN、フジテレビ系列のFNN、1970(昭和45)年に日本教育テレビ(テレビ朝日)系列のANNが発足している。
 このニュースネットワークの成立と前後して、放送番組や営業ネットワークに関するキー局とネット局との間で個別業務協定も結ばれ、ネットワーク編成、営業が整備、強化されていった。1967(昭和42)年4月には、東京放送が、JNN加盟全社との個別業務協定を締結し、いちはやくネットワーク編成や営業の協定・系列化を実現している※15。

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