SANZUI vol.07_2015 spring

ロングインタビュー 郷ひろみ

ライブで歌っていて、
100 点満点だと思えた瞬間は
ほんのわずか。

きれいに続いて終わる歌のように、
人生もディミヌエンドしていきたい

――ライブではブルース、ラテン、ジャズなど、多様な要素を取り入れた起伏のあるステージをやられています。

ライブは2時間くらいあるので、多くの自分の要素を観ていただきたいですから。自分がやりたい音楽をやるということではないです。ライブは魅せる要素が大きいので、いかに楽しんでもらうかが最大のポイントですね。

――先々のシンガーとしてのビジョンはありますか?

ジャパニーズ・ポップスのど真ん中をやるのが大前提で。その上で70歳の時にはこうありたいというものを成立させるために、今しなければいけないこと、しなくていいことの取捨選択をしていかねばと思っています。

――郷さんにとって、歌うことの魅力とはどんなことでしょうか?

歌は僕にとっては限りなくスリリングなものなんですよ。楽器は押さえれば音が出るけれど、歌はその時になってみないと、どうなるかわからないところがある。体調のいい日もあれば、すぐれない日もある。でもそんなことは微塵も言えないわけですから。しかも歌には完璧はない。及第点は取らなきゃいけないけれど、満点なんてほとんどない。自分の中で大満足なんてことは4年に1回くらい。オリンピックと同じくらいの頻度ですね(笑)。しかもライブの中でせいぜい1曲。それくらい歌というのは難しい。だからこそ、ライブで歌うのはスリリングだし、モチベーションが上がるし、自分を成長させてくれるんだと思います。

――その探求の日々はまだまだ続いていくわけですね。

バラードを歌う時、最後の音をずっと伸ばすじゃないですか。ウウウウウーッて。長くきれいに伸び続けると、みなさん、拍手してくださる。でも途切れたり、かすれたり、あるいは音程が下がったら、あれ?ってことになる。だから腹筋と背筋を使って細心の神経を使わなければならない。人生も同じ。ゆっくりと最後にすーっときれいに終えていくのが自分の人生の理想の形。それは歌から学んだことですね。いつこの世を卒業するかはわからないけれど、それまではずっと神経を使って、ある時期からディミヌエンド(音楽記号。だんだん弱くという意味)していきたい。だからまだ自分のディミヌエンドは始まっていないんですよ。いよいよこれから自分の成功が始まると思っていますから。


PROFILE シンガー、俳優。1955年10月18日生まれ。福岡県出身。1972年、NHK大河ドラマ「新・平家物語」で俳優としてデビュー 。同年8月シングル「男の子女の子」で歌手デビュー。「よろしく哀愁」「お嫁サンバ」「言えないよ」「GOLDFINGER' 99」など数々のヒット曲を送り出して、現在まで99枚のシングルを発表。5月20日には100枚目のシングル「100の願い」をリリースする。5月27日からは全国ツアーもスタート。(※情報は発行当時)

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