CPRA news Review

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徴収業務から振り返る芸団協CPRAの20年の歩み

CPRA運営委員副委員長(二次使用料/貸レコード担当) 上野 博

商業用レコード二次使用料等徴収業務

news70_img002.gif商業用レコード二次使用量等に係る歴史

 音楽CDをはじめとした商業用レコードに固定された実演(以下「レコード実演」という)を放送、有線放送で利用した際、放送局等は実演家に二次使用料を支払わなくてはならない(著作権法第95条1項。以下「二次使用料」という)。この二次使用料を受ける権利(以下「二次使用料請求権)という)は、「国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体...でその同意を得て文化庁長官が指定するもの」がある場合には、その団体のみが行使することができる(著作権法第95条第5項)。そのため、芸団協は1971年にこの団体として指定されて以降、二次使用料徴収業務を行ってきた。
 二次使用料請求権は、放送メディアの発展とともに請求対象が広がってきた歴史がある。
 現行著作権法制定当時、二次使用料を支払う放送局等は、地上波放送局及び有線音楽放送局のみだったが、1989年には衛星放送が、1992年にはコミュニティFMが開局し、続々と契約相手も増えていった。
 また、有線放送のうち、制定当時に二次使用料請求権の対象となったのはUSENのようなレコード実演を多用する有線音楽放送のみで、ケーブルテレビの有線放送については、二次使用料請求権に権利制限が働いていた。というのも、ケーブルテレビ事業は発足当初、地上放送の難視聴解消を目的とした同時再送信業務を主としており、その経営規模も地上波放送局に比べ小規模なものであったためである。
 その後ケーブルテレビは、自主制作チャンネルや、有料の衛星チャンネルの同時再送信を開始しチャンネルを拡充する発展を遂げたため、二次使用料請求権の対象に適用される著作権法改正が段階的に行われた。まず、1986年の法改正により、レコード実演の使用が増大していた自主制作チャンネルが対象となった。次に、2008年の法改正により、放送の同時再送信の権利制限が撤廃されるに至った。このときの背景として、営利型ケーブルテレビの事業拡大発展や規制緩和により広域をカバーする巨大なケーブルテレビの誕生、またIPマルチキャストによる放送同時再送信の商用化の影響があげられる。芸団協CPRAは、このような法改正を契機とし、ケーブルテレビの団体と交渉を進め、徴収を行うに至っている。

news70_img003.gif商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬徴収額とCDレンタル店店舗数の推移

 放送、有線放送でのレコード実演の使用に関連して、芸団協CPRAでは、レコード実演の放送用録音及び放送番組をインターネット配信する場合の送信可能化等について著作権等管理業務を行っている。これら放送用録音使用料及び送信可能化権使用料を含めた二次使用料等徴収額は、芸団協CPRAが徴収する使用料・報酬等の総額の実に6割を占めている。
 二次使用料等徴収額は芸団協CPRA設置当初、7億円程度であったが、現在では50億円程度と、約7倍まで増加している。これは、前述の通り徴収先を拡大したり、管理範囲を拡大したり、あるいはローマ条約に日本が加盟したことにより洋盤も管理するようになったり、といった要因もある。しかし、それ以上に、使用する楽曲は、楽曲名ではなく、それを演奏したり、歌唱したりするアーティストで選ぶことが多いのだから、レコード実演の価値は音楽著作物の価値と同等である、という考えの下、粘り強く徴収先と交渉してきた成果といえよう。特に、芸団協CPRAが設立され、音事協、音制連といった放送、有線放送で良く利用されているレコード実演に係るプロダクションを代表する委員が交渉の前面に立つようになったことで、より交渉のリアリティを増したのではないか、と自負している。今後は放送・有線放送だけではなく、インターネットラジオ等の普及等に備え、レコード実演の送信可能化の管理拡大についても研究を進めていきたい。

 芸団協CPRAの徴収業務は、一般社団法人日本民間放送連盟、一般社団法人衛星放送協会など、それぞれ業界団体がある場合は、使用料額あるいは料率について交渉の上、団体間合意した後、それに基づき会員社との間で契約締結し、支払請求することとなる(日本放送協会やUSENについては、別途使用料額等について交渉、合意の上、契約を締結し、支払い請求する)。そのため、業種によっては会員社が零細なために支払が滞ったり、二次使用料等を支払わなくてはならない認識がなかったりする場合もある。また、ケーブルテレビやコミュニティ放送の場合、業界団体に加盟していない放送局も多いため、これらの放送局がどのくらいあるのか実態を把握する必要がある。それらの非加盟放送局から使用料等徴収するにあたっては、まずレコード実演の利用に際して実演家に対し二次使用料等を支払う必要があることを周知徹底しなければならない。このような業務は受け取る使用料等の額から見ると、決して「割りのいい仕事」ではない。しかしながら、実演家に二次使用料を支払うという著作権法上規定された制度を実効性のあるものたらしめるためには、文化庁長官から実演家の二次使用料を受け取る団体として唯一指定された芸団協としては、あまねく利用者から徴収するよう努力し続けることが責務であると考えている。

商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬

news70_img004.png商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬徴収額とCDレンタル店店舗数の推移

 芸団協CPRAの商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬徴収業務は、著作権法が改正され、商業用レコードの貸与に係る権利が実演家に付与された1985年に開始された。1980年に初めて登場した貸レコード店は、若者の支持を受けて急速にその店舗数を増加させていった。貸レコードの普及に伴い、消費者はレコードを購入する代わりに貸レコード店から借りて録音するようになったことから、レコードの売り上げが下がり、社会問題となった。1985年、著作権法が改正され、著作者には貸与権が、実演家及びレコード製作者には、商業用レコードの貸与に係る排他的権利※1及び報酬請求権※2が付与された。商業用レコードが販売されてから1年の間、実演家には排他的権利である貸与権が付与されるが、それ以降は報酬請求権となる。この報酬請求権は、「実演家を業とする者の相当数を構成員とする団体」が文化庁長官に指定されている場合には、その団体のみが行使できる。また、貸与権も権利者だけでなく、指定団体も行使できる(著作権法第95条の3)。そのため、芸団協は1986年にこの団体として指定されて以降、報酬だけでなく、使用料も併せて管理してきた。1992年、著作権法が改正され、外国の実演家にも貸与に係る権利が与えられたことから、芸団協CPRAは洋盤の管理も始めている。2009年には、貸与回数に応じたオンラインレンタル使用料の徴収を開始している。

news70_img005.png商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬徴収額とCDレンタル店店舗数の推移

 芸団協CPRAの商業用レコードの貸与に係る使用料・報酬徴収額は、2003年から2006年に一時落ち込んだものの、徴収方法を、現在の月額固定使用料とサーチャージ使用料との併用方式に変更することで回復し、2009年以降、20億円程度の水準を保っている。特に2012年度は音楽CD生産額が14年ぶりに回復したことに伴い、徴収額が前年度を上回った。
 現在、芸団協CPRAでは、CDレンタル店から、一店舗当たりの月額固定使用料と、CDレンタル店が、レンタルCD卸代行店からレンタルCDを仕入れる際の商品代金に上乗せする形で、仕入れ枚数に応じたサーチャージ使用料による徴収方法を採用している。
 レコード・CDレンタル店の数は、1989年のピーク時は6,213店舗まで達したものの、その後減少し続け、2012年には2,757店舗と半分以下まで落ち込み、大手二社による寡占が進んでいる。

 貸レコードが登場した1980年代に比べると、CDというパッケージを通じてではなく、インターネット音楽配信サービスなどを通じて音楽を聴くというように音楽の聴き方は多様化している。そのような中で、今後のCDレンタル産業の動向を見据えつつ芸団協CPRAが、どのように取り組んでいくのかが、今後の課題と言えるだろう。

放送番組の二次利用(レコード実演を除く)に係る使用料等

 放送番組への出演の際に俳優等の実演家に支払われる報酬は放送許諾の対価であって、かつ契約に別段の定めがない限り、通常放送目的外の番組の利用に係る対価は含まない。したがってビデオグラム化などの放送以外での二次利用については、改めて実演家の許諾が必要になる。そのため、芸団協は1980年代以降、他の著作権・著作隣接権集中管理団体と協力し、タンカー乗組員、海外在留邦人等に視聴させるためのテレビ番組の録音・録画に関して、権利処理を行ってきた。1989年からは、このような零細な利用だけでなく、地上波放送のビデオグラム化や番組販売についても、権利処理業務を行ってきた。
 2002年、著作権等管理事業法が施行され、芸団協CPRAはレコード実演に関し著作権等管理事業者となった。俳優等の放送番組での実演(以下「放送実演」という)についても一任型管理業務を行うため、放送局等との交渉を重ね、2007年4月にようやく著作権等管理事業を開始した。ところが、著作権等管理事業者となった際の委任者数が想定したよりも少なかったため、放送局から連絡先等不明な実演家の権利処理が滞り、コンテンツの流通が進まないとの不満が生まれ、実演家著作隣接権の許諾が円滑になされないのであれば、事前の許諾を必要としない報酬請求権に切り下げてはどうか、との厳しい意見も出された。そうした中、利用者、文化庁および芸団協CPRAは、2008年5月から、後述の裁定制度が導入されるまでの間、ビデオグラム化や番組販売する放送番組に出演していた連絡先等不明な実演家分の使用料を芸団協CPRAがいったん預かり、放送局に代わり不明者の調査を行い、委任勧誘を積極的に取り組み、コンテンツ流通の促進に努めた(これら一連の業務を、以下「過渡的受け皿業務」という)。

news70_img006.png放送実演使用料徴収額の推移

 2009年、著作権法が改正され、相当な努力をして権利者を探索しても見つからなかった場合、文化庁長官の裁定を受けて、一定の供託金を預けて著作物を利用するという裁定制度が実演家著作隣接権にも新たに設けられた。これにより、連絡先等不明な出演者があったとしても、文化庁長官の裁定を受ければ、放送局は放送番組を二次利用出来ることになり、芸団協CPRAが過渡的受け皿業務を行う必要がなくなった。また同年、放送番組の二次利用に関し、もう一つの動きがあった。これまで、放送番組の二次利用の申請窓口は、芸団協CPRAと音事協であったため、放送局は二つの窓口に分けて申請するなど、処理が煩雑であった。芸団協CPRAは、音事協及び音制連とともに、利用者からの更なる二次利用の円滑化の要請に応えるため、一般社団法人映像コンテンツ権利処理合同機構(aRma)を設立した。これによりaRmaは、二次利用の許諾申請の増大が予想された送信可能化を統一窓口として受け付けて対応したのである。その後、aRmaは送信可能化だけでなく、ビデオグラム化と番組販売についても受付業務を行うとともに、放送番組の有線放送同時再送信報酬の徴収分配業務を行うこととなった。
 芸団協CPRAが徴収する放送実演使用料の多くは、放送番組のビデオグラム化にかかる使用料だが、昨今ではオンデマンド型配信サービスが増えていることに伴い、送信可能化に係る使用料徴収額が急増している。芸団協CPRAでは、今後も利用形態の変化に柔軟に対応し、放送番組の二次利用の促進に資するべく努力していきたい。

※1 排他的権利:実演の利用を許諾したり、禁止したりできる権利
※2 報酬請求権:実演が利用された際に、使用料(報酬)を請求できる権利。実演の利用を許諾したり、禁止したりすることはできない。

※本文は、上野副委員長へのインタビューをもとにCPRA事務局が資料追加の上、構成した。

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