エッセイ 佐々木かをり
Illustration / Asuka Kitahara
佐々木かをり「ライブが生活をジューシーにする」
4年前、知人の路上ライブで初めてゴスペルの世界にふれて、とても感動しました。実は、自分ではカラオケも行ったこともないぐらいでしたが、1年後にはゴスペルクワイア(聖歌隊)をつくりました。病に倒れた母の介護も一段落し、私にも精神安定が必要だと思ったタイミングでした。月に4回、2時間のレッスンで、本番に向けて練習します。メンバーは会社役員や弁護士、作家、俳優など二十数人。いつもはリーダーの立場にある人たちが、先生の指導を受けながら歌や振りも覚えて。ハモった感じや一緒に舞台をつくる達成感というか喜びは、とても開放的です。仕事で10分の隙間もない、大きなストレスの毎日なのに、やっぱりレッスンに来てよかった、と皆帰っていく。
歌うことやコンサートを楽しむことは、ビジネス界でも、いい意味で人懐っこい、人が集まって来る力を育てるようです。音楽がある空間を一緒にエンジョイできる自分であること。「この人と一緒に仕事をしたい」とか、「もっと一緒にいたい」、「また会いたい」と思わせるような"色気(seductive /魅了する)" も、ライブを楽しむ時間を持つことで醸成されるのではないでしょうか。色気のある人じゃないと仕事もうまくいかない。それだけの色気があるから、みんながその人のファンになります。
私は、音楽が好きすぎるぐらい好きです。中学のときからずっとチューリップや財津和夫さんのライブに行ったり、最近はポールマッカートニーさんの東京公演全て。ミュージカルもよく見に行きます。ライブの空間が好きなんです。ライブなものにふれると、生活が豊かになる。そういう時間をもつことで生活がジューシー(juicy)になります。音楽や演劇など、心を揺さぶるものは、人としての幅を広げる。心が柔らかい方が何でもうまくいくでしょう。
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