特集 笑い
Photo:Ko Hosokawa
玉川奈々福泣きもあれば笑いもある、感情に訴えるのが浪曲
20年前、三味線の音色に惹かれて浪曲の世界に足を踏み入れた。「浪曲の三味線は音の出し方が自在。効果音や"うっ " という人の感情なんかも描けます。いくら弾いても飽きません」。軽い気持ちではじめたが、音色の先にある浪曲の核心がなかなか掴めなかった。師匠に促され、節をうなったことでさらに深みにはまった。「節をうなって、はじめて芸の自在さを感じました。浪曲師と曲師の裁量がすごく大きい。だからセッションがうまくいったときの快感は喩えようもありません」。
近年では他ジャンルとのコラボレーションも多い。「例えば格式の違うお能でも、身体と身体で息が合う共通性に気づいて、お能の語りの間に三味線を入れられた。譜面がなくて人の息を盗む浪曲の三味線ならでは」。芸能の特徴を探ることで世界が広がっている。
浪曲といえば浪花節。浪花節はお涙頂戴の代名詞だが、笑える話も多いという。「昔は寄席でも浪曲が入っていて、その多くが粋な笑いでした。いまあまり知られていないのは残念。泣きもあれば笑いもある。感情に訴える浪曲は、その振り幅が大きい。『次郎長伝』や『左甚五郎伝』などネタそのものが笑えるものがいっぱいある」。
笑いが好きだった師匠から受け継いだ演題の他に、新作にも取り組む。「自分がいいなと思う価値観を込めたい。原作に惚れ込んで浪曲にしたり、お涙頂戴の先入観を覆したいと『浪曲シンデレラ』という爆笑の作品をつくったり。緊張を強いられる世の中だから、客席で物語に心浸しているときだけは、油断してほしい。身体緩めてほどけてほしい」。
舞台は生き物。お客様とつくる空間を毎回楽しみに、舞台やワークショップなど、独自の企画が生まれている。
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