SANZUI vol.09_2016 winter

特集 笑い

Photo:Ko Hosokawa

笑いは、人生を幸福にする。

笑いは、ストレスを和らげる。
笑いは、脳の働きを元気にする。
笑いは、人を美しくする。
笑いはまわりの人に伝染し、
コミュニケーションを円滑にする。
つまり、笑いは、たくさんの人の人生を幸福にしている。
そんな笑いを創り出す人とは、一体どんな人なのか?
ただ人を笑わせるために、人知れず芸を磨き、日々鍛錬を続ける。
その人たち自身も、とても素敵な笑顔をしていた。

春風亭昇太ストレス解消法はうけること

テレビ番組『笑点』でもお馴染みの春風亭昇太さん。寄席での一席は主に創作落語。現代の言葉で、時代にこだわらないストーリーを展開する。

10代のころは演劇やコントに憧れていたという。「大学に入って初めて観に行った落語がすごく面白くて、それから。演劇は、人と絡むことが多いから、僕には向かないと思った。落語は一人でできる。やってダメなら僕のせいとあきらめもつく。自分で演出できるのが、落語の最大の魅力」。

当時は漫才ブーム。マスコミにも、落語家は時代遅れの笑いをやっていると思われていた。そんな中、寄席でタブーとされていたメガネを貫き、高座(舞台)で寝っころがるようなことも。「これが落語?」と思いつつも爆笑を誘う。型破りな演出にとまどう落語ファンもいたものの、プロの落語家からは応援された。「落語家は落語が完成していると考えるとダメだと思う。僕が落語を演出するとしたらこうなります、というのが今やっていること。伝統芸だけど、伝承芸じゃない。個々の考えをより強く出さないと」。

もちろん、初めてのネタは特に考えるし、悩むし、ストレスがたまる。でも、落語家の最大のストレス解消法はうけるということ。「落語をやる難しさと同時に、うけるという楽しさが待っているからできる。独演会やトリのとき、幕が下りて拍手が止まない中、幕の向こう側で『あ~面白かった!』という声が聞こえてくると幸せ」。笑いはストレスをもみほぐしてくれる、脳へのマッサージ。「大変な時期に、人は笑いたいと思う。それは、震災のときに感じた。個々のお客さんが求めている笑いがあるから、その選択肢の中に春風亭昇太がいるといいな、と思う」。

映画や人が楽しむモノの値段を見るたびに、落語がもっと面白いかと考える。「いつも懸命にやることを心がけている。絶対に最後まであきらめない、やりきる!今日のお客さんに楽しんでもらうことだけを考えてやっています」。今やれる精一杯、だからこそいつも目が離せない。


PROFILE 1959年、静岡生まれ。1982年春風亭柳昇に入門。1986年二ツ目。春風亭昇太となる。1992年真打ち昇進。新作落語の創作活動に加え、現代的な解釈で落語に取り組む。演劇や音楽のジャンルを超えた公演でも幅広く活躍。落語の書籍、CD、DVDの他、著者に「城あるきのススメ」。第55回文化庁芸術祭(演芸部門)大賞受賞。

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