美匠熟考
Photo / Anna Hosokawa
Number:005 Spinning Top江戸曲独楽(きょくごま)やなぎ南玉(江戸曲独楽師)
曲独楽は、江戸時代の元禄13年に京都の四条河原で初めて演じられ、早くも2年後には江戸で大流行します。『末広がり』や『刃渡り』などの演目が生まれ、江戸曲独楽として今に伝承されています。
独楽という字の由来が面白い。京都から太宰府に流された菅原道真公。暇で遊ぶものがないかと尋ねると、あたりの木を切り丸く削って渡される。それを道真公が廻したら三日三晩廻り続けた。道真公が独りで楽しんだから『独楽』。切ったその木は伝説の飛梅だったというから恐れ入ります。
大奥が好んだとされる赤、黒、金が江戸曲独楽の基本色といわれ、昔は梅の木で作られましたが、今では目が細かいミズキを使う。簡単なように見えますが廻すだけでも1年。技を身につけ高座に上がれるまでには10年かかる。独楽の動きは繊細そのもの。毎回、緊張感を楽しんでいます。
協力:太神楽曲芸協会、公益社団法人落語芸術協会
Number:006 Chromatic Harmonicaクロマティックハーモニカ崎元讓(ハーモニカ奏者)
ハーモニカは1821年にドイツで発明されました。アコーディオンなどと同じリードオルガン属の楽器。真鍮のリードが息によって振動して音が出ます。日本には明治時代に輸入され、戦前にはハーモニカのオーケストラまでありました。
いくつかの種類のハーモニカがありますが、私はクロマティックと呼ばれる半音階を出すことができるスライドレバーが付いているハーモニカを使っています。総純銀製のものが一番、響きや深みがありますが、音がちょっと硬くて金属的な面もある。そこで柔らかい音にするために純銀のベースに、一部黒檀を被せ、日本のハーモニカ製作者と試行錯誤して完成させたのが、このハーモニカです。ハーモニカは息を吹くだけではなく、吸うことでも音を出せる数少ない楽器です。他の管弦楽器とはひと味違う音色が楽しめます。
協力:ハーモニカ工房 クレモナ(CREMONA)
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