特集 手
舞台の上には、観客の目を惹きつける「手」がある。
手の動きひとつで、空気が変わったり、音楽を感じたり、心が揺さぶられ涙することも。
千の言葉より多くを語る、表情豊かな「手」に迫る。
手影絵 劇団かかし座人の息吹の感じられる芸能として、
素手と身体を使って、自分たちで道を作っていきたい
Photo / Ko Hosokawa Text / Kiyoshi Yamagata
劇団かかし座は、創立以来60年以上に渡って、様々な素材や道具、手などを使って影絵による総合パフォーマンスを創作してきた。そしてさらに手の可能性を追求して、手影絵のみで構成された"Hand Shadows ANIMARE" を制作し、国内外でも高い評価を得て、どの公演先でも笑顔と暖かい拍手に包まれている。代表の後藤圭さんとパフォーマーの方々に話を聞いた。
「手影絵の魅力は、人間の根源的なところにあると思います。はるか昔の人類の祖先は、洞窟の中で火をたいて壁に映った影で、遊びをするようになった。この記憶がきっとわれわれの遺伝子の中にあるはずです。だから人間はどこの国でも手影絵が大好き。これを現代の芸能として創作したのが、"Hand Shadows ANIMARE" なんです」
"ANIMARE" とはラテン語で"生命を吹き込む、元気付ける" という意味。パフォーマンスは4人で行われ、いろいろな動物や鳥などを手だけで演じ分ける。パフォーマーにとって一番大切なことは?
「手影絵は、スクリーンと光源の狭い空間の中で、4人がみんな同じイメージを共有して、お互いの呼吸と気配を感じながら息を合わせて手に生命を吹き込んでいきます。まずは、それぞれの手の形と動きがしっかりと決まっていなければならない。さらに動物の重量感、そして心音や息づかいが聞こえて、筋肉の躍動感のようなものまで手だけで伝えます。それには、演じる動物の形や動きの特徴を徹底的に研究するだけではなく、お腹がすいたときや眠い状態をどうやって手で表現したらいいのか、とにかくイマジネーションを膨らませて動物の気持ちになりきって、稽古を繰り返します。手を微妙に曲げたり伸ばしたり、スクリーンに頭が映らないように身体を反り返らせたり、それはそれはいろいろ試行錯誤しています(笑)」
"Hand Shadows ANIMARE" の公演は約1時間。手の表現力と足腰の鍛錬、そして何よりも集中力が必要だ。
「人は誰でも手を持っていて、手影絵は世界中で行なわれています。手の表現力は演じれば演じるほど、可能性を秘めているのがわかってきました。手影絵のアンサンブルは世界でも余りありません。だからこそ、人の息吹の感じられる温かみのある芸能として、素手と身体を使って、自分達で道を作っていきたいですね。昔からある人間的な手影絵と最新のCGなどもバランス良く組み合わせて、現代に生きる素晴らしい芸能として、楽しみながら、常に何かしら新しいことに挑戦しようと思っています。この手に限界はありません」
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