特集 色
坂本美雨 シンガー/ミュージシャン 人の役に立ちたいという欲求が、私に色を与えた
Photo / Ko Hosokawa Text / Eiichi Yoshimura
高校生の頃はグラフィック・デザイナーを目指していました。当時から強い色よりは淡い色のグラデーションに惹かれていた。何色ってはっきり言えない色のグラデーションが好きだったんです。
日本語って色を表す語彙がすごく多いですよね。グラデーションの中にあるなんとも言えない色にすごく美しい名前がつけられている。ニューヨークで育ったからこそ、日本語のそういうところが美しいなあといつも私は思っていました。
それまで、自分の歌で強く自己主張するということをしたくなかったし、避けていた。自分を出すのではなく、音楽という崇高なものの源泉みたいなところに無私で沿いたいという欲求があったんですね。
ところが、音楽を作る動機が変わって、そういう意識も変化した。その頃、自分の音楽で人の役に立ちたいという欲求が生まれたんです。デビューから10年たった頃は、実は自分が音楽をやる意味を見失っていて、なんのために歌っているんだろうという迷いの時期でした。自分の音楽で誰かの役に立ちたいという新しい目的を見つけて、自然と歌もイメージもカラフルになっていったんです。
でも、透明だからメッセージがないわけじゃない。透明は無色じゃなくて透明色という「色」だと思う。透明な水が空を映して青く見えるように、いろんな音やメッセージをちゃんと映し出したり、逆に反発したりという色であるべき。私はそんな自分の声を、きちんと芯のある透明色にしたいと思って歌っています。
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