特集 色
「色」は、もともと色彩を意味する言葉ではありません。
万葉の時代には血縁を意味し、兄や姉を「いろせ」や「いろも」と呼びました。
恋するもの、男女の交遊、女性の美しさ、さらには美しいものの一般名称へ。
そして、さまざまな使われ方を経て、現在のような意味になりました。
いつの時代も「色」は、強く引かれる何かを表す言葉でした。
色彩、色気、音色 ―― 舞台の上には、魅力的な「色」がいっぱい。
磨かれた技術や道具、そして身体が発する色が、私たちの日常を色づけます。
実演芸術を彩るいろいろな「色」を探してみました。
森山開次観客の脳裏に焼きついた色がどんな色だったのか
それが一番興味深い
Photo / Maiko Miyagawa
骨格や内臓のコスチュームに不思議な音楽。はじめは所在無げな観客も、いつの間にか森山開次さんの踊りに自然と導かれ、惹かれ、巻き込まれ、気がつけば『LIVE BONE』の世界の中にいる。子供番組「からだであそぼ」から生まれたこのパフォーマンス。厳選された色彩がひときわ鮮やかに映える舞台空間を、一体どうやって創り上げているのだろうか?
「僕にとって色はとても重要な表現の一つ。コスチュームを着ることは色を纏うことでもあります。昔は衣装を自分で染めていましたが、今では舞台の空間を踊りで染めています。照明で空気に色もつけますが、空間に色がつくように描きながら踊っています。舞台で動くこと、そこに存在していることで生まれる身体が発している空気の気配や色にこだわっています。この作品では僕とコスチュームが仲良くなる時間が必要でした。踊りの動きとコスチュームはとても密接な関係にあります。身体と一体となった動きで目の前の観客にどんな印象を残せるかが大切だからです。空間にコスチューム、照明、踊りが重なってその時に色合いが生まれる。そして観ている方達の気分によっても色はそれぞれ違うかもしれません。観客の脳裏に焼きついた色がどんな色だったのか、それが僕にとって一番興味深いことですね」
森山さんは稽古場では黒の上下しか着ない。それにはどんなこだわりがあるのだろうか?
「稽古場で黒でいるのは舞台で変化するためです。作品の中で衣装を着た時の発見とか喜びもありますし、黒から何かを纏っていくという作業が、人前で踊るという高揚感を高める。着飾るということが楽しみでもあるので、稽古場ではなるべくシンプルでニュートラルにしていたい。そして舞台で踊るということは人と出会い、自分の色を発見することでもあります」
舞台は観るものだとばかり思っていたが、実は舞台から観られていることでもあった。
「僕も観られていますが、実は僕も皆さん一人ひとりをじっくりと観ています。踊りながら観る風景というのも実に楽しくて毎回ワクワクします。踊りというのは求愛の舞が原点ですから、観客と僕が踊りによって引き合い、気持ちが一体となれば、そこに色気も生まれるかもしれません。年齢や時代に応じて踊りも感じ方も自分の色もどんどん変わっていくでしょうが、これからもずっと自分の変化を感じて楽しみながら、観客も自分も、元気になる踊りを続けていきたいと思っています」
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