PLAZA INTERVIEW

vol.040「お客様に喜んでもらえることを第一に」

新作落語にとどまらず、独自の解釈で古典落語にも取組む、落語界きっての人気者である春風亭昇太さん。オリジナリティ溢れる高座は旧来の落語ファンにくわえ、新しいファンをふやし、昨今の落語ブームのシンボル的存在に。また、「笑点」「あなたが主役50ボイス」等の人気テレビ番組のほか、映画・ドラマ・CM・演劇への出演、落語家デキシーバンド「にゅうおいらんず」などの音楽活動も行い、ジャンルを越えた幅広い活躍をされています。「大学のサークル活動でラテン・アメリカ研究会に入りたかったのに、誰もいなくて隣の落語研究会に入ったのがそもそものきっかけ」と語る昇太さん。落語家として、五代目春風亭柳昇師匠、芸団協CPRA、そしてご自身について、田澤祐一芸団協常務理事が伺います。
(2013年01月21日公開)

Profile

春風亭昇太さん
静岡県静岡市清水区出身。 1978年東海大学文学部へ入学。落語研究会での活動を経て、1983年に五代目春風亭柳昇に入門。前座名は昇八。1986年に二つ目昇進、春風亭昇太に改める。1992年には席亭推薦により抜擢にて真打昇進。2006年から東京の落語家・講談師などが組織する公益社団法人落語芸術協会の理事もつとめている。 独創的な新作落語で人気を博し、NHK新人演芸コンクール優秀賞受賞(1989年)、国立演芸場花形演芸大賞(2000年)、文化庁芸術祭大賞受(2001年)など受賞多数。 寄席や落語会を中心に、テレビ、演劇への出演も多く役者としても活躍する。またミュージシャンら異ジャンル共演も意欲的に行なっている。 2013年3月18日には、東京芸術劇場で開催される芸団協主催公演「芸の饗宴シリーズ 披き・落語 ~醸と贅~」昼の部に出演予定。

お客様に喜んでもらえることを第一に

040_pho01.jpg ――昇太さんは新作も古典も高座にかけていらっしゃいます。新作と古典の違い、その割合について日頃から意識されていますか。

とくに意識したことはないですね。落語の場合は、その日その会、来ているお客さんにあわせて演目を決めます。お客さんの反応を見ながら、喜んでもらえることを考えながら演目を選んでいます。

――最近では各噺家が主体となって開く独演会や落語会が随分と盛んです。師匠にとってこれらの会と、定席である『寄席』の違いは。

どんな場所でも、どこであってもその場所で、お客さんに楽しんでもらえるよう全力投球するだけなんです。寄席であるとか独演会とか意識したことはないですね。ただ、独演会だと僕を楽しもうというお客さんが来てくれているわけですが、寄席は自分のファンじゃない人もたくさんいる。そういう方の前でやれるのはとても魅力的だとおもいますね。だから寄席でうけるとなによりうれしい。

全ての世界は若手にかかっている

――昇太さんにとって、春風亭柳昇師匠(元芸団協副会長)はどんな師匠でしたか?

温和な師匠でしたが、とにかく芯がしっかりしていた。プロっぽいというか、プロ意識が高いというか。入門してから色々なことを教わりましたが、とくに言われたわけではありませんけども、プロの姿勢というものを、そばで見ていて学んだとおもいます。今の僕の暮らしがあるのは、すべて春風亭柳昇のおかげです。

――最近は落語ブームもあり、入門者が増えているようですね。

ぼくらのころは極端に前座がすくなかった。なんでもやらなければならないので、否応なしに鍛えられていたってところがありました。いまは人数も多くすこしかわいそうにおもいます。人があまっているからやらなくてもいいことが多い分、経験できないことも多いかもしれません。いつでもどこでもとりあえず全部やらなきゃならなかった、あの時代の前座でよかったなとおもいます。

――落語芸術協会の理事として、今後の落語界をどのように見てらっしゃいますか?
この世界にかぎらず、すべての世界は若いひとたちにかかっているわけです。どれだけベテランががんばっても、今持っている程度の、そこまでの力でしかない。すべての業界は新しく入る、やってみようとおもっている人たちにかかっている。そういう意味では、若い人たちがたくさん入ってきて、その皆さんに期待しているんです。

幸せな子供の頃の名残?

040_pho02.jpg ――地方に行かれると城跡めぐりをされていますよね。
どうして好きなのかはよくわかりません(笑)。でも、生まれが旧清水市の二の丸町というところでここはかつて武田の家臣だった馬場信春(美濃守)という方が作った「江尻城」という城があった場所なんです。そこでうまれているんです。なにか因縁めいたものを感じます。

――昭和レトログッズコレクターで旧車愛好家でもいらっしゃる。
昭和グッズに関しても、なんで好きなのかはよくわからないのですが、よくよく考えてみたらあれ全部、子どもの頃あったものなんです。たぶん子どもの頃幸せだったんだなと。そういうものに囲まれていると、居心地がいいんだとおもいます。幸せなんだとおもいます。
旧車に関しては、当時自家用車は持っていなかったんですけども、車はものすごいステータスが高くうらやましくてしょうがなかった。だからたぶん僕がみてかっこいい車ってのはあの時代の車。でも役に立たないですよ、もう(笑)。いまでも走るのは走るけど、シートベルトもついてないから。でもマツダのキャロルを買っちゃったんで近々きます(笑)。

――音楽活動もたくさんされていますよね。

中学校時代はブラスバンド部でした。高校時代はバンドなどもやっていて、現在は「にゅうおいらんず」や、GSのバンドなどもやっています。音楽は和洋とわずどんなものも好き。

――落語とはリズム感が合うとか。

いやー、どうなんでしょう。音楽はたとえ歌詞がついてなくても、聞いてその世界観をイメージするわけじゃないですか。イメージする、させるってところは落語と共通しています。

選ばれた誇りと責任を胸に

――私ども芸団協CPRAの活動へのご意見、ご期待をお聞かせください。

ものすごく重要な仕事だとおもいます。BS、CS、CATV、地方局そしてネットとバブルの頃からメディアがものすごく増えました。媒体は増えたのだけど、それを実演家側は管理できない。実演家、とくに噺家なんて二次使用料なんて知らない人たちばかりなんです。メディアが増えたから露出の機会はたしかに多くなりました。だけどただ野放しにされてはこまる。実演家ができない、一括して権利処理してくれる団体の仕事はますます重要になっているとおもいます。

――3月に行われる芸団協主催公演「芸の饗宴シリーズ 披き・落語 ~醸と贅~」に出演いただきます。能楽と落語が同じステージで共演する珍しい企画です。

これは芸団協でなければ企画できない、貴重な公演だとおもいます。
そもそも「能楽」と「落語」では派生した時代背景や歩んできた歴史もちがう。異ジャンルの、それも素晴らしい能楽師と共演できる、素晴らしい落語家たちと共演できるってのは、"おれもここに選ばれたか"って感じです!(笑)選ばれているな、というのと同時に、責任も感じます。

2013年の意気込みは?

040_pho03.jpg ――入門前はどんなジャンルの芸能に興味がありましたか?

落語をやるまでは、他のジャンルもまったく見ていなかったので、なにも知らなかったんです。落語をやるようになってから、色々なものを見るようになりました。演劇であるとか、能楽・歌舞伎などを見るようになった。もしかしたら落語をやる前にほかのジャンルに出会っていたら、そっちに行っていたかもしれない。それくらい無知で真っ白だったんです(笑)。

――ラテン・アメリカ研究会に入部していたら、どうだったかわからなかったですね。
いやー、もしそっちの方に行っていたら、『ミス・ボリビア』とかと結婚していたかもしれないわけで(笑)。中南米のすごいキレイな子と結婚していた可能性もあるし。どっちが幸せなんだかわかんない。

――あきらめず、そちらも目指されてみては?(笑)
今は日本の女性がいいです!いや、日本・韓国・中国と広げておこうかな。いやいや、東アジア全域としておいてください!!

――それが2013年の意気込みということで伺っておきます。本日はお忙しい中ありがとうございました。

040_pho04.jpg <春風亭昇太さん出演>
芸団協主催公演
「芸の饗宴シリーズ『披き・落語~醸と贅(じょうとぜい)~』」
"専門家が選んだ、今観ておきたい出演者"をテーマに、「能楽」と「落語」を取り上る当公演。能楽師による舞囃子で幕開け、落語界をけん引する上方落語協会、落語協会、落語芸術協会らの協力による豪華出演者の落語をたっぷりと。

040_pho05-b.jpg【日時】平成25年3月18日(月) 昼夜各1公演
・[昼舞台~醸~] 14:00開演
能楽(舞囃子):武田宗和(シテ方観世流)ほか
落語:春風亭昇太、柳家喬太郎、三遊亭遊雀、笑福亭三喬、桃月庵白酒
・[夜舞台~贅~] 18:30開演
能楽(舞囃子):朝倉俊樹(シテ方宝生流)ほか
落語:桂歌丸、林家染丸、柳家さん喬、三遊亭小遊三、柳亭市馬
【会場】東京芸術劇場プレイハウス(中ホール)
【料金】昼夜各 ¥5,000(税込:全席指定)
【チケット発売】平成25年1月20日(日)10:00

入場券取扱いプレイガイド(各窓口で先行予約も実施中)
◆ローソンチケット http://l-tike.com/ (PC・モバイル共通)
・0570-084-003(L コード:32981)*自動音声対応
・0570-000-407 10:00~20:00受付 *オペレータ対応
・ローソン店舗Loppiで直接購入
◆チケットぴあ http://pia.jp/t/
・0570-02-9999(P コード:425-742)
・セブン-イレブン、サークルK・サンクス、チケットぴあ店舗で直接購入
◆e+イープラス http://eplus.jp/geinokyoen/ (PC・携帯)
・ファミリーマート店舗で直接購入
◆東京芸術劇場ボックスオフィス
PC http://www.geigeki.jp/t/ 携帯 http://www.geigeki.jp/i/t/
・電話予約、東京芸術劇場ボックスオフィス窓口販売
03-5391-3010(休館日を除く10:00~19:00)
【詳しくはこちら】http://www.geidankyo.or.jp/01new/index.htm

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