2019.02.18
「知的財産推進計画2019」の策定に向けて意見書を提出しました
2月14日、「知的財産推進計画2019」の策定に向けた意見書を提出しました。知的財産推進計画は、政府が実施すべき知的財産関連施策について、知的財産戦略本部が定めるものです。
今回の意見書では、「公衆への伝達に係る権利の見直し」及び「クリエーターへの適切な対価還元」の二点について述べています。
意見書の全文は以下の通りです。
知的財産推進計画2019の策定に向けた意見
1 公衆への伝達に係る権利の見直し
我が国の著作権制度は、「実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約(WPPT)」が定める「公衆への伝達」に係る実演家とレコード製作者の権利の在り方が国際条約や国際水準と整合していない。具体的には、「レコードの公衆への伝達」のうち、ウェブキャスティングやサイマルキャスティングなどの放送類似のサービスについて、WPPTが報酬請求権の対象としているにもかかわらず、許諾権(送信可能化権)を適用としている。一方で、店舗等で聴かせる目的でのレコード利用(いわゆるレコード演奏・伝達)については、許諾権どころか報酬請求権も付与されていない。
こうしたアンバランスな制度の弊害が、通信と放送の融合やグローバル化が進展する今日において、顕在化している。
ウェブキャスティングやサイマルキャスティングなどのサービスは、放送と同様に大量かつ多様な楽曲を使用するが、放送と異なり許諾権が適用されることから、円滑な利用環境整備や制度見直しを求める声が強まっている。さらに、こうした制度の不備が、我が国においてウェブキャスティングやサイマルキャスティングなどのサービス普及が進まない一因であるとの指摘もある。また、我が国のみが許諾権を適用していることから、当団体が諸外国の集中管理団体と相互管理協定を結ぶ際の支障ともなっている。
加えて、同じ「公衆への伝達」に含まれるレコード演奏・伝達については、我が国では作詞家・作曲家に権利が与えられているにもかかわらず、未だに実演家とレコード製作者には権利がないため、適正かつ衡平な対価が還元されていない。ヨーロッパをはじめとした先進国だけでなく、韓国をはじめ、アジア諸国においてもレコード演奏・伝達権の導入が進んでおり(世界145ヶ国で導入済)、我が国は国際的な潮流から取り残されている。この問題は、日EU経済連携協定(EPA)第12条においても十分な保護に関する継続討議が盛り込まれるなど、我が国の対応に国際的な関心が高まっている。
文化の発展のためには、音楽が円滑に利用され、そこから適正かつ衡平な対価が支払われる制度を構築することが重要である。従って、「レコードの公衆への伝達」に係る権利とその集中管理の在り方について、諸外国の例も参考にしながら、全体的な見直しを行うことを「知的財産推進計画2019」に盛り込むことを要望する。
2 クリエーターへの適切な対価還元
この問題は、私的録音録画補償金制度の見直しとして2003年7月の「知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画」において取り上げられて以降、毎年、知的財産推進計画に掲げられているが、現在に至るまで結論は得られていない。
この問題を検討する「文化審議会著作権分科会著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」においても、今年度は具体的な制度設計に関する検討を行うこととなっていたが、実態調査等で補償金の課されていない機器等による私的録音録画が、依然として大量に行われていることが再確認されているにもかかわらず、未だ結論は得られていない。ポータブルオーディオプレイヤーやHDD内蔵型ブルーレイディスクレコーダーなど、私的複製の蓋然性が高い機器等については速やかに政令指定を行い、それ以外の機器等については、これまでに同小委員会で整理された課題をふまえ、具体的な制度設計について来年度中に結論を得て、必要な措置を講じるべきである。「知的財産推進計画2019」では、政府がこの問題の解決について主導的な役割を果たし、積極的かつ具体的にスピード感を以て取り組む旨を明記するべきである。