各委員会を中心とした芸団協CPRAの取組について
芸団協CPRA
2024年9月18日に開催された権利者団体会議において、令和6・7(2024・2025)年度の実演家著作隣接権センター委員(CPRA運営委員)が選出された。
これを受けて、10月4日に開催された運営委員会では、委員長及び副委員長が選出され、5つの諮問委員会の設置及び担当運営委員を決定した。
芸団協CPRA運営委員会の新体制に当たって、新たに選任された中井秀範運営委員長のほか、各諮問委員会の担当運営委員からコメントを頂いた。
CPRA新体制にあたって
芸団協CPRA運営委員長 中井秀範
2015(平成27)年9月の運営委員会において、運営副委員長に選出されて以来、私とCPRAとのかかわりも10年目を迎えようとしています。この10年の間、音楽は、フィジカルの音楽CDから、サブスクリプション型のストリーミングサービスで聴くことが当たり前になりました。
また、地上波の放送番組も、同時・見逃し配信やオンデマンドストリーミングで視聴できるようになり、劇場用映画や放送番組以外にも、大手動画配信プラットフォームにおいて優れた作品が公開されるようになりました。
この度、CPRAは新たな期を迎え、運営委員長に選出されました。前任の崎元讓さんは、2001(平成13)年7月から20年以上の長きに亘り運営委員長を務められました。昨年10月にCPRAは設立30周年を迎えましたので、崎元さんにはそのほとんどの期間、運営委員長を務めていただいたことになります。改めて、ご尽力いただいたことに感謝申し上げます。
運営副委員長には、金井文幸運営委員および土屋学運営委員が選出されました。委員会体制も、「総務委員会」、「法制広報委員会」、「徴収業務委員会」、「分配業務委員会」および「海外徴収・分配委員会」の5つの委員会に整理統合し、より迅速な議論が進められる体制となりました。各委員会に参加する委員が、実演家やプロダクションなどの実演権利者全体にとって何が必要であるかを捉え、国内外の実演をめぐる現状や課題について、しっかりと勉強し、前向きな議論を進めて欲しいと思います
ここ数年だけを見ても、メタバースやブロックチェーン、そして生成AIなど実演をめぐる環境は著しく変化しています。この先の5年、10年を見据えると、これまで以上に大きな変化がもたらされるかもしれません。しかしながら、ゼロからイチを生み出すクリエイターが報われなければならないことには変わりありません。実演家の権利をめぐっても、インターネットにおける実演利用からの対価還元を目指した集中管理範囲の拡大や、「レコード演奏・伝達権」の創設など、引き続き取り組まなければならない課題はたくさんあります。
新たな委員長として、粉骨砕身して取り組んでいきたいと思います。関係各位におかれましては、引き続きご理解ご協力いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
法制広報について
運営委員 丸山ひでみ
コロナ禍を経たコンテンツ視聴のデジタルシフト、さらには生成AIの登場により、実演をとりまく環境は劇的に変化しています。
そのような変化の中にあるからこそ、著作隣接権による実演の保護と公正な利用を実現する仕組みづくりにより、クリエイターへの適切な対価還元を促進していくことが、非常に重要になっていると言えるのではないでしょうか。
このようなビジョンのもとで、実演にかかわる著作隣接権の集中管理団体として、使用料等の徴収、分配を適切に実施していくことはもちろん、集中管理範囲の拡大を含む実演家の権利の拡充を図っていくことが、芸団協CPRAの果たすべき重要な責務です。しっかりと調査研究や社会からの理解を得るための広報活動などにも取り組む必要があります。
この責務を果たすために、法制広報委員会として、国内外の動向等についての調査研究を行いつつ、文化庁をはじめとする政府関係者に対して働きかけるとともに、ウェブサイトやSNSなどを活用した積極的な情報発信を行い、「法制」と「広報」を両輪とした、実演家の権利拡充に向けた活動を展開すべく、頑張っていきたいと思います。
総務について
運営委員 高村 宏
この度の新体制発足にあたり、CPRAを取り巻く昨今の状況や課題に効率的に対応するべく、従来あった7つの諮問委員会を5つにする再編を行いました。
今後更なる成長が求められる「海外徴収・分配」と、実演家の権利拡大や地位向上の原動力となる「法制広報」、そして、CPRA運営の基盤整備を担う「総務」の各委員会を引き続き配置するとともに、要である国内の「徴収業務」と「分配業務」をそれぞれ1つの委員会に集中させ、機能強化を図っています。
今期も、CPRAに課せられた社会的使命と責任を果たすべく、専門的な知見の更なる集積と後進の育成を遂行し、適正な組織運営を支える体制づくりを進めてまいります。
徴収業務について
運営委員 金井文幸
2023年度の国内レコード実演の徴収額は約78億円となりました。コロナ禍を除き、ここ10年ほどキープしていた80億円台を下回る結果となりましたが、これはパッケージ時代に隆盛した貸レコードの徴収額が大幅に縮小しているためです。一方、徴収の基盤である放送等におけるレコード実演の徴収額については、微減傾向となっています。
世界的に動画配信サービスが普及する中、放送事業の市場規模は、かつて4兆円あった時期から3兆円後半まで下降しました。放送コンテンツを取り巻く環境は、ネット配信による番組の視聴が増加傾向にあり、大きな変化が生じています。
このような環境変化に対応するべく、これまで設置されていた「二次使用料委員会」、「貸レコード使用料委員会」は、「徴収業務委員会」として新たなスタートを迎えることになりました。徴収業務委員会の主な課題は、番組配信サービスにおいて重要な役割を持つレコード実演について、使用料水準を適正化することです。このような配信サービスは、放送とは利用態様が異なり、実演家の権利面においては支分権も異なります。大手民放テレビについては、TVerによる見逃し配信の著しい成長も踏まえた対価を求める必要があります。またNHKについては、放送法改正によりインターネット配信が必須業務化するため、放送の補完という位置づけから脱却した議論が必要となります。このような議論を深め、放送コンテンツの利活用促進に繋がれば、実演家等の権利者と放送事業者とが、共存共栄の関係を構築していくものと考えられます。
また、著作権等管理事業者として、集中管理の推進を図ることも求められています。配信サービスなどを中心に、レコード実演の利用が見込まれる分野に対しても管理範囲の拡大を目指し、関係各所のご理解ご協力を得ながら取り組んでいきたいと思います。
分配業務について
運営委員 中道秀夫
商業用レコード二次使用料の分配において、ノンフィーチャード・アーティスト(以下NFA)の分配結果について検証を行いました。確認された課題を踏まえつつ、2025年度からの楽曲単位での分配に向けて、各団体一丸となって速やかに協議を進めていきたいと思います。楽曲単位の分配への移行にあたっては、NFAデータの収集が重要な要素となります。これまでカタログ単位での収集に機能が限定されていたレコード制作管理表登録システム「CDRA」を、二次使用料の楽曲単位での収集にも対応する「CDRA2」としてシステムリニューアルを実施しました。楽曲単位の収集をより効率的に進めるためには、各団体の連携強化は必要不可欠であり、分配業務委員会の中でしっかり議論を重ねた上で、新たな運用ルールの構築を目指していきたいと思います。
これまでCPRAのシステム化を担ってきたデータセンター推進委員会は、分配業務委員会に統合されることになりました。分配業務を円滑に行う上で、システムとデータはとても密接に関係していることから、より迅速かつ効果的に課題を解決していくことが可能になるのではないでしょうか。また、各団体が利用している「権利者団体連携システムMAPS」を含め、システムを通じて、関係者間の利便性向上および作業効率化を図っていきたいと思います。
海外徴収・分配について
運営委員 中井秀範
海外団体との契約数は43カ国55団体となり、SCAPR(実演家権利管理団体協議会)が運用する実演家データベース(IPD)および作品データベース(VRDB)を利用した適正な徴収・分配を実施しています。この数年の海外分配額は約4億円で大きな変動こそありませんが、登録数が88法人となった海外エージェントへの分配額が約3割を占める傾向が続いています。一方の海外徴収額は、NFA分の徴収強化などに努めた結果、2023年度に初めて8000万円に達しました。海外でも日本の楽曲が聴かれる機会が増えつつあることから、今後もVRDBを活用した権利者不明楽曲の検索や、海外のフィンガープリント会社が保有するデータの精度に関する調査などにより、さらに徴収額増を目指してまいります。
交流連携業務としては、日本国内での実演家の権利拡大を目標に、EUを中心とした諸外国における法改正など最新状況の把握に努め、情報交換を積極的に行っています。また、音楽市場規模の大きい東南アジア地域をターゲットとした育成支援事業として2023年度より開始した「実演家の権利管理に関するアジア団体フォーラム」では、アジア全体の実演家の権利管理の底上げを目指して、各国のニーズに応じた支援を継続的に実施しています。あわせて、SCAPRの開発協力ワーキンググループやWIPO(世界知的所有権機関)、NORCODE(ノルウェー著作権開発協会)が主催する実務研修に講師として積極的に参加することで、可能な限り早期の徴収の実現を目指します。