権利者団体会議 議長・委員からのご挨拶
芸団協CPRA
2024年9月18日に開催された権利者団体会議において、令和6・7(2024・2025)年度の実演家著作隣接権センター委員(CPRA運営委員)が選出された。新体制を迎えて、権利者団体会議の議長・委員からコメントを頂いた。
新期を迎えてのご挨拶
芸団協CPRA権利者団体会議 議長
一般社団法人日本音楽事業者協会 会長
瀧藤雅朝
平素より実演家著作隣接権センター(CPRA)の取組にご理解、ご協力を賜り心から御礼申し上げます。
長らく暗雲低迷が続いていたライブ・エンタテインメントの復調も目覚しく、2023年はコロナ禍前を上回る市場規模となりました。また、ここ数年のデジタル技術の進化や生活様式の変化もあって、アーティスト活動も多様化し、音楽の楽しみ方はますます広がっています。
一方で、生成AIに代表されるような新たな課題も出てきており、アーティスト活動において権利が侵害されたり、著しく不利益を被ることがないよう、国際的にも様々な取組が進められています。日本でも、生成AIと著作権との関係については、文化庁文化審議会著作権分科会法制度小委員会においても議論され、パブリックコメントに際しては、芸団協CPRAからも意見を提出しました。しかし、本年3月に公表された『AIと著作権に関する考え方について』は、生成AIと著作隣接権との関係については触れられておらず、議論を継続していくことが必要であるとしています。また、『知的財産推進計画2024』では、著作隣接権の保護対象とならない、タレントやアーティストの肖像や容姿、声などの利用については、不正競争防止法その他の関連する法律との関係を整理するとしています。生成AIをめぐる技術は著しく発展し、文章や画像、音楽の分野から映像の分野にまで広がりつつあります。諸外国の動向にも注視しながら、適切な措置が講じられるようCPRAからも積極的に働きかけていきたいと思います。
また、レコード演奏・伝達権の確立やバリューギャップ問題の解消、アーティスト活動にとって重要な権利である肖像権やパブリシティ権の立法化など、従来からの課題も依然として残されたままです。この5年の間にも、インターネット広告費が、新聞、雑誌、ラジオ、テレビのマスコミ4媒体広告費を上回るなど、エンタテインメント産業を取り巻く環境は、日々変化しています。こうした変化の中で、アーティスト活動の下支えとなる著作隣接権による保護、そして公正な利用と対価還元を実現するための仕組みづくりは、関係団体とも協力しながら推し進めていかなくてはなりません。
実演家の権利処理の集中管理団体であるCPRAは、「実演家」と「事業者」によって運営されるという世界的にも類を見ないユニークな体制を取っています。昨年、設立30周年という節目を迎えましたが、ここまで歩みを進めることができたのも、業界団体・関係者皆様の情熱とご協力があってこそと、あらためて感謝の念を抱いております。これからも権利者4団体と芸団協とが協力し、円滑なセンター運営と、諸課題への取組や普及啓発に努めてまいります。権利者団体会議議長として、引き続き真摯に取り組んでまいりますので、今後も皆様からのご指導ご鞭撻を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
権利者団体会議委員からのご挨拶
一般社団法人日本音楽制作者連盟 理事長
野村達矢
CPRA設立から30年が過ぎ、音楽産業を取り巻く環境も大きく変化しました。音楽ユーザーの視聴スタイルもストリーミング主体へ移行し、プロモーション展開もデジタルツールをフル活用するようになって、国内作品発表と同時に海外でも聴かれる環境が整いました。
かつては海外公演を行うに際し、各地のリスナー認知度調査や事前プロモーション活動に大きな負荷がかかっていましたが、今日ではそれぞれのアーティスト・楽曲がどの国、どの地域でどれくらい聴かれているのか、支持を集めているのかを常時確認できます。そのため、多くのアーティストにとって海外公演は身近なものになりました。さらに、自分たちが意識していなかった国から、SNSでのバズが引き金になって、イベントに招聘されるような事例も出てきています。昨年だけでも、ポピュラー系のアーティスト225組、約900公演が海外で実施されています。
このような海外進出を下支えするためにも、法整備が不可欠なのですが、残念ながら我が国ではレコード演奏・伝達権が、実演家やレコード製作者に付与されておらず、諸外国で日本の楽曲が使用されても使用料の分配を受けることができていません。
引き続きCPRAでは、このレコード演奏・伝達権の整備に向けて活動していかなければと考えています。
一般社団法人演奏家権利処理合同機構MPN 理事長
倉田信雄
去る8月にMPN理事長を拝命し、同時に権利者団体会議委員にも就任する運びとなり、身の引き締まる想いです。
30年前のCPRA創設時には、経験不足の若輩ながら、芸団協の委員として(当時の所属団体はSMC=スタジオ・ミュージシャンズ・クラブ)、音事協、音制連の諸先輩方に必死でついてゆく日々を過ごしておりましたが、ごく個人的な事情で活動が難しくなり、後をギタリスト椎名和夫、ピアニスト中西康晴の両氏に託しました。
彼らはその後、著作隣接権使用料等の個人分配実現により特化したPIT=パブリック・イン・サード会を立ち上げ、さらには周囲の演奏家団体を束ねてのMPN=ミュージック・ピープルズ・ネストを立ち上げるに至り、特に椎名氏は音楽活動を休止してまで、MPNを今日の姿にまで育て上げ、CPRAを支え、30年前から思えば夢のような個人分配実績を実現するに至りました。
彼の偉大な業績を引き継ぐのは荷の重いことですが、現在は、生成AI問題や音楽ビジネスモデルの劇的な転換など、実演家の権利や芸術文化を守るために、一層の対応が必要な時です。
微力ながら、全力でお手伝いさせていただきます。よろしくお願いいたします。
一般社団法人映像実演権利者合同機構 代表理事
小野伸一
前回この場でご挨拶申し上げてから、あっという間に2年が経ち、その間も、我々の社会や実演家をめぐる状況には、多くの変化が見られました。世界情勢は依然として不安定な状況にありますが、一方で、新型コロナウイルス感染症の影響は徐々に和らいでまいりました。「CPRA news Review」をご覧の皆さまには言うまでもないことと存じますが、文化芸術活動が再び活性化する中、デジタル技術等の進展に伴い、実演家の権利に関する課題も複雑化してきております。特に、AIによる生成技術の進化はめざましく(本原稿の草案も生成AIが作成しました)、我々に新たな課題をもたらし、コロナ禍に加速したストリーミングサービス等のさらなる普及は、実演家
の権利の管理および収益分配の仕組みに新たな議論を呼び起こしています。
このような背景の中、芸団協CPRAは権利者の声を尊重しつつ、透明性のある運営を心がけ、そして、実演家の権利を守るため、絶え間ない努力を続けてまいりました。新期も、実演家の権利の確保と健全な管理が実演家の活動を支える基盤であるとの認識を強く持ち、文化芸術の持続
可能な発展に貢献すべく、引き続き尽力してまいります。
関係各位におかれましては、変わらぬご協力を賜りますようお願い申し上げます。