各委員会を中心としたCPRAの取り組みについて
芸団協CPRA運営委員会
2022年9月12日に開催された権利者団体会議において、令和4・5(2022・2023)年度 芸団協CPRA運営委員が選出された。
これを受けて、10月7日に開催された運営委員会では、委員長及び副委員長が選出され、前期同様、運営委員会の下に七つの諮問委員会を設置するとともに、担当運営委員を決定した。
芸団協CPRA運営委員会の新体制決定を踏まえて、崎元讓運営委員長のほか、七つの諮問委員会の担当運営委員に、コメントをお願いした。
CPRA新体制にあたって
芸団協CPRA運営委員長 崎元 讓
実演家著作隣接権センター(CPRA)は、平成5年(1993)年、芸団協に設立され、来年には設立30周年を迎えることになる。芸団協CPRAは、世界的にも例を見ない、実演家と事業者によって運営される、著作権法に基づく実演家の権利処理の集中管理団体であり、「権利者の、権利者による、権利者のための機関」として、その業務について「独立性」、「専門性」及び「透明性」をもって運営されている。
このたび令和4・5年(2022・2023)年度の運営体制がスタートした。権利委任団体、すなわち日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、演奏家権利処理合同機構MPN及び映像実演権利者合同機構の代表者で構成される権利者団体会議、及び権利委任団体の役職員で構成される運営委員会、それぞれの委員は、ほとんどが前期役員の再任となる。運営委員会委員長は、私、崎元が、副委員長には金井文幸委員と中井秀範委員が再任された。また今期の諮問委員会も従来どおり設置された。前期同様、運営委員、各権利者団体役職員、学識経験者から適任者が選任されている。
新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響が依然として続く中、ロシアのウクライナ侵攻や円安の長期化など様々な不安要素も加わって、私たちの業界、特に実演家の大変厳しい状況は当面続くと思われる。芸団協CPRAとしては、今まで以上に実演家の権利を守り、使用料等の徴収、分配を円滑に果たしていくために、今ある権利の維持はもちろん、「レコード演奏権・伝達権」や「ウェブキャスティング」など新たな権利獲得や集中管理範囲の拡大を目指していくことが重要である。今期もこれらの諸課題を前に進めていくために権利者団体会議、運営委員会、各諮問委員会及び事務局職員が一丸となって活動していくことが大切である。これからも引き続き関係諸団体のご協力とご指導、ご鞭撻を賜りたい。
法制広報について
担当運営委員 丸山ひでみ
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症は、感染拡大と縮小を繰り返し、生活のあらゆる場面に影響を及ぼしながら、早くも3年を経過しようとしている。
その終息が見えない中、我々は、依然として、ライブやコンサートなどの開催が中止や延期に追い込まれたり、観客数を制限されたりするなど制約のある環境の中で活動しなければならない状況にある。そのような中、著作隣接権による実演の保護と公正な利用を実現する仕組みづくりと強化は、益々重要なものと言える。
実演に係る著作隣接権の集中管理団体として、使用料等を徴収し、分配する役割はもちろんのこと、集中管理範囲の拡大の可能性を含む実演家の権利の拡充は、芸団協CPRAに与えられた役割の重要なひとつであり、そのための調査研究は欠かすことができない。さらには、実演家の権利の拡充の必要性を広く訴えかけることが必要である。
法制広報委員会として、このような役割を果たすために、文化庁をはじめとする政府関係者に対して働きかけるとともに、ウェブサイトやSNSなどを活用した積極的な情報発信を行い、「法制」と「広報」とが両輪となって、実演家の権利の拡充に向けた活動を続けていきたい。
総務について
担当運営委員 相澤正久
芸団協CPRAは来年(2023年)、設立30周年を迎えるが、管理する権利の種類および徴収額はその過程で大きく変容してきた。今年度は貸レコード使用料・報酬の徴収額が前年度比50%を割り込み、また商業用レコード二次使用料関係も減少傾向が予想される一方で、授業目的公衆送信補償金等の分配が開始される見込みとなっている。
今期も引き続き徴収を滞りなく行うとともに、分配に関しても従来の慣行にとらわれることなく、未来志向で時代に即した質の高いものを目指していく。また、実演家の権利に関する調査研究・広報も含め、次世代への知識・経験の継承、後進の育成を確りと行い、事務局体制の充実を図りたい。
二次使用料について
担当運営委員 坂内光夫
民放では、最初の緊急事態宣言が出され、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響を大きく受けた2020年度に比べ、2021年度はその影響を依然受けつつも東京オリンピック・パラリンピック開催などにより、広告収入は回復した。しかしながら、2022年度は、インターネット動画配信の普及によりテレビの視聴率の低下が進んだこと、またウクライナ情勢や物価高騰などが影響して広告市況が失速している。
このような中、キー局を中心とした放送同時配信が本格的にスタートした。若年層のテレビ需要を喚起し、放送以外の広告収入を得る取り組みを見守りつつ、2023年度の使用料交渉に臨みたい。
NHKとは協議が難航し、2021年度の取り決めができていない状況である(10月現在)。NHKは減収局面の中で経営陣が契約見直しを進めており、レコード実演使用料に対しても料率の引き下げを要求している。しかし、この引き下げには論理的な理由はなく、一方で、放送の補完と位置付けてきたインターネット配信は視聴数が順調に増加し様々な議論が必要となる中、NHKの要求を安易に受け入れることはできない。実演家を代表する文化庁長官指定団体の責務として、あるべき使用料水準を粘り強く主張し、解決に向かいたい。
貸レコードについて
担当運営委員 中道秀夫
緊急事態宣言により外出が控えられるようになったこともあり、音楽の聴き方はサブスクリプション型が主流となった。
CDパッケージの需要は縮小し、かつて国内に約6000店舗存在したCDレンタル店は約1300店舗にまで減少した。このような環境変化により、2021年度には、日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDV-J)との協議を実施し、契約内容を見直し、固定制から売り上げに応じた使用料への変更を行ったが、閉店に歯止めをかけることはできなかった。大手事業者のチェーン店や直営店も、CDレンタル中止や閉店の申請が増える傾向にあり、CDレンタルの今後は、大手事業者本部の経営判断によるものと思われる。
また、80年代よりCDV-Jに委託してきた徴収業務については、協議の結果、業務委託を解除した。現在は、自主徴収を円滑に実施している。今後も、文化庁長官の指定団体として、滞納を未然に防ぎつつ、徴収を継続していく。
音楽関連分配について
担当運営委員 池田正義
商業用レコード二次使用料の分配において、権利者団体会議の合意に基づき2021年度実施したノンフィーチャード・アーティスト(以下NFA)の分配方法について結果検証を行っている。各団体から寄せられた課題をもとに当委員会にて検証を行い、合意に向けた協議を続けていく。
一方で、30年以上分配を行ってきた貸レコード使用料・報酬については、CDレンタル市場の縮小に伴って徴収額が減少しており、分配方法を見直す段階にきている。当委員会ではその見直しの一環として、NFA分配に使用しているレコード制作管理表を、従来の貸レコード使用料・報酬のみを対象とした収集から二次使用料NFA分配で発生する楽曲も含めた収集方法へと変更するべく検討を開始した。貸レコード使用料・報酬の作業効率化および前述の二次使用料NFA分配のデータ拡充という二つの課題解決に繋がるものとして効果が期待される。
また、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)では教育機関からの徴収が既に開始されており、分配業務受託団体として芸団協CPRAが受領する補償金について、適切な分配方法の検討を行っていく。
このデジタル社会で必要な「透明性」「公明性」を保持し、各テーマにおいて委員会としての「説明責任」を果たしていきたい。
海外徴収・分配について
担当運営委員 椎名和夫
海外団体との契約数は35か国45団体となり、実演家権利管理団体協議会(SCAPR)が運用する実演家データベース(IPD)を利用した適正な徴収・分配を実施している。海外分配額に大きな変動はないが、エージェントの登録数が75法人となり、その分配額は海外分配総額約4億円の3割を超える勢いとなった。海外徴収額は、NFA分の徴収強化などに努めたが、昨年度はコロナ禍による定期分配の遅延等のため前年度より約400万円の減少となった。今後は分配遅延分の回収と作品情報データベース(VRDB)内の権利者不明楽曲の検索等により徴収額増加を目指したい。
交流連携業務としては、EUを中心とした諸外国における法改正など最新状況の把握に努め、情報交換を積極的に行っている。一方アジア育成支援事業としては、芸団協CPRA実務研修の招聘国5か国に対しての継続的な支援のほか、世界知的所有権機関(WIPO)主催のセミナーでの権利管理の実務等の講義、SCAPRの開発協力ワーキンググループでのアジア各国の課題の共有などを行った。
またウクライナ侵攻の影響を受ける各国への支援を検討し、まずは多数の難民を受け入れているポーランドの団体、STOARTに対して支援金の拠出を行った。今後も適切かつ効果的な支援を継続検討していく。
データセンター推進について
担当運営委員 板垣一誠
レコード制作管理表の収集方法を、従来対象としてきた貸レコード使用料・報酬だけでなく、商業用レコード二次使用料にも対応したものとすべく音楽関連分配委員会で検討されることとなった。当委員会はその課題解決に向け、運用フロー見直しに係る技術的サポート、また新たな収集方法に対応する新システムの開発を実施する。関係団体が利用している「権利者団体連携システムMAPS」については、前期の検討において、リニューアル対応で実装する基本機能の仕様を確定し、開発フェーズに移行した。リリース時期は2023年1月を予定しているが、本番稼働後も引き続き利便性向上・作業効率化を目的とした要望対応を行っていく。
また、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)より今後受領する補償金についても、音楽関連分配委員会での検討をサポートしていく。
なお、2021年4月に「ミュージック・ジェイシス協議会」を前身とする一般社団法人音楽情報プラットフォーム協議会が設立されたことにより、権利情報データの収集・管理への注目度が高まっている。文化庁が実施する権利情報集約化等検討委員会の実証事業においても積極的に意見を発信し、音楽作品に係わるデータの充実に協力していきたい。