権利者団体会議 議長・委員からのご挨拶
芸団協CPRA権利者団体会議
新期を迎えてのご挨拶
芸団協CPRA権利者団体会議 議長
一般社団法人日本音楽事業者協会 会長
瀧藤雅朝
平素より当センターの活動にご理解、ご協力を賜り心より御礼申し上げます。
さて、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響下での社会活動も3年が経ち、今夏はようやく野外フェスや公演を通常に近い形で実施することができました。様々な制限も解除されつつあり、社会の正常化によるエンタテインメント業界の回復にも期待がかかりますが、まだまだコロナ前の集客には遠く及ばないのが現状です。
これまで本当に数多の公演やイベントが中止になり、その影響は当初の想定を遥かに超える深刻なものとなりました。社会が暗い時にこそ希望となるはずのエンタテインメント業界さえも活動の場を失い、その役割を果たせないことが、どれほど実演家の皆様にとって苦しいことであったでしょうか。また、失業状態といえるほどに実生活への影響も切実なものとなり、エンタテインメント産業の脆さが突きつけられました。コロナ禍という社会の大きな転換点で浮き彫りになった課題は多く、権利者団体としていかにエンタテインメント産業の基盤を強固にしていくか早急に対応してまいりたいと考えております。
私たちにとっての最重要課題は、実演家の活動を下支えする著作隣接権による実演家の保護、および公正な利用を実現する仕組みづくりとその強化です。すばらしい実演が日々提供されているにもかかわらず、その対価の還元が適正でないと感じる場面が昨今増えております。直近では、私的録音録画補償金制度の対象にブルーレイディスクレコーダーを追加指定する著作権法施行令の一部を改正する政令がようやく閣議決定されました。先般の文化庁による意見募集には、当センターも意見を提出し、芸団協を含む19の権利者団体も連名で意見表明をしております。制度見直しの議論が長引く間に社会は著しく変容し、私的録音録画の行為自体が縮小したり、コピー制限で十分という乱暴な論調が広まるなど様々な歪みも生じる中、一層ユーザーの理解が得にくい状況が生じております。これらも踏まえ、実態に即した制度への、見直しも含めた議論がなされることを求めます。
DX時代を迎え、バリューギャップ問題に代表されるように、実演家の対価を適正化する重要性は高まる一方です。レコード演奏・伝達に係る権利の導入のような時代に即した権利の創設や、著作隣接権に関わる諸制度の適正化に向けた動きを加速させる必要も強く感じております。また、実演家の権利について国際的に問題視される共通の課題も多く、日本国内においても先を行く諸外国の事例を参考に、適切な措置が図られるよう積極的に働きかけてまいりたいと思います。
権利の適正化と両軸を成すのは、ユーザーにたくさん視聴・鑑賞していただくことです。そのためにも実演家の活動機会の維持・拡大が必要であり、実演家の権利や立場の保護と創作サイクルを維持していくため、権利者団体会議としても引き続き努めてまいりますので、皆様方のご協力を賜りますようお願い申し上げます。
権利拡大と権利処理体制効率化を
一般社団法人日本音楽制作者連盟 理事長
野村達矢
ようやく新型コロナウイルス感染症感染拡大による公演中止や延期も減少し始め、活動正常化に向けた動きが見られるようになりました。未だ地方公演や来場者の年齢層により集客に苦労しており、会場内での大声発声の禁止等活動面で厳しい面も多々ありますが、立ち止まるのではなく、前に進んでいかなければなりません。コロナだけでなく、様々な資材に及ぶ物価高、人件費の高騰、そして人手不足が、コンサート活動にも音源制作にも重くのしかかっています。アーティスト活動に係るコストが軒並み高騰する状況の中、残念ながら芸団協CPRAが扱う権利報酬は減少が見込まれています。私的録音録画補償金制度においてブルーレイディスクレコーダーが追加指定されたことは歓迎すべきニュースですが、芸団協CPRAに参加する音楽実演家の創作活動を下支えしていくためにはレコード演奏・伝達権をはじめ、各種デジタルサービスにおける実演家の権利拡大を一層進めていかなければなりません。
すでに、音楽ビジネスの中でも"メタバース"、"NFT"等Web3世代の取り組みが始まっています。大規模資本による中央集権的な情報管理から分散型に移行していく中で、音楽作品の使用実績把握、対価の評価や徴収、そして分配は大きな課題となります。それらに対応していくためにも、芸団協CPRAは効率的な権利処理体制を構築し、権利処理に必要なデータ拡充、整備を推進しなければならないと考えます。
権利の上に眠ってはならない
一般社団法人演奏家権利処理合同機構MPN 理事長
椎名和夫
2022年10月21日に開催された閣議において、私的録音録画補償金制度の対象機器としてブルーレイディスクレコーダーを追加指定する政令改正が行われました。この制度に新たな機器が追加されるのは2008年以来、実に14年ぶりのことです。1992年にスタートした補償金制度の創設にあたっては芸団協が中心的な役割を果たし、今年9月に残念ながら他界された棚野正士芸団協元専務理事の遺産ともいうべきものです。われわれ芸団協CPRAは、こうしたレガシーを守っていくだけでなく、より今日的なものへとアップデートしていく重大な責任を負っています。その意味で、小さいながらも重い一歩であってほしいと願います。
「放送二次使用料」「レンタル報酬」「補償金」は、たしかに芸団協CPRAに集う権利者に大きな大きな恵みをもたらしてきましたが、BBCが電波を返上する意向など、また放送のみならず既存の媒体が雪崩を打ってネットへとシフトしていく中で、「Webcasting」「公衆への伝達」「DX時代における新たな対価還元方策」へとシーンは移りつつあります。芸団協CPRAが取り組むべき道筋も明らかで、こうした課題の解決に一丸となって注力していく必要があります。「制度」「産業構造」「国民性」など言い訳を見つけるのは簡単ですが、こうしている間にも世界は動いています。権利の上に眠る権利者は保護されないという言葉がありますが、皆様と力を合わせて大胆かつ緻密に取り組んでいきたいと思います。
新期を迎えて
一般社団法人映像実演権利者合同機構 代表理事
小野伸一
「新しい」生活様式が求められて久しく、もはや新しくはなく、すっかり通常の生活様式となりつつあります。これほどまで長期間の感染症との戦いになるとは誰も想像し得なかったかと思いますが、この長きに渡る苦境のなか、実演家やその関係者が懸命に試行錯誤し、立ち向かう姿を幾度となく目の当たりにしてまいりました。コンサートや公演の実施など、少しずつ明るい兆しが見えつつある一方、依然先行き不透明な状況は続いており、芸団協CPRAが果たすべき「実演家の権利を守り、創造を支える」という役割を、引き続き、着実に、確実に、果たさなければならない時と痛感しています。先般、私ども映像実演権利者合同機構(PRE)も役員改選を実施し、新たな体制となりました。私のみならず、役員一同、各々が責任を持って芸団協CPRAに携わっていく決意を新たにしております。
また、2012年、芸団協の公益社団法人化とともに設置されたこの権利者団体会議も、設置から10年を超えました。この節目がより良き節目となるよう、音楽3団体に追随し、権利者団体会議委員、運営委員会委員、各諮問委員会委員とともに芸団協CPRAの業務に誠心誠意向き合って参りたいと思います。
引き続き広く関係各位のご協力を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【関連ページ】
≫芸団協CPRA 運営体制/委員一覧(2022・2023年度)