CPRA news Review

他の記事を探す
カテゴリで探す
記事の種類で探す
公開年月で探す

デジタル単一市場における著作権指令に伴うフランス知的所有権法典の改正

財田寛子(元・著作権情報センター附属著作権研究所専任研究員)

2019年、EUにおいて「デジタル単一市場における著作権指令」(DIRECTIVE (EU)2019/790)が採択された。これに対応するためのフランスの著作権法改正について、元・著作権情報センター(CRIC)附属著作権研究所専任研究員の財田寛子さんに執筆いただいた。

I.はじめに

フランスにおいて、知的所有権法典(フランス著作権法)の複数回の改正(2019年7月24日法※1、2021年5月12日のオルドナンス※2、2021年11月24日のオルドナンス※3)により、デジタル単一市場における著作権指令※4(以下、「著作権指令」)の国内法化が行われた。以下では、フランスにおいて、著作権指令第17条(オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダによる保護コンテンツの利用)、第12条(拡大的効果を有する集中ライセンス)、第18条~第23条(利用契約における著作者及び実演家の公正な報酬)がどのように国内法化されたのかを中心に、改正の内容を概観したい※5

Ⅱ.オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダによる保護コンテンツの利用

著作権指令第17条(オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダによる保護コンテンツの利用)を受けて、知的所有権法典に、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダによる著作物等の利用に関する規定が新たに設けられた。これにより、YouTubeをはじめとする、利用者がアップロードしたコンテンツの共有サービスを提供する者が、どのような場合に著作権等の侵害責任を負うかが明確にされ、適法なコンテンツ共有サービスを促進するための規定が整備された。

まず、改正規定の対象となる「オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダ」は、「サービスプロバイダが、直接的又は間接的に利益を得ることを目的として編成及び促進する、利用者によってアップロードされた著作物又はその他の保護目的物を、大量に保存し、公衆がそれらへアクセスできるようにすることを主な目的又は主な目的の一とする、オンラインでの公衆への伝達サービスを提供する者」(L. 137-1条第1項)と定義されている※6

次に、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、利用者がアップロードした著作物等へアクセスできるようにすることにより、著作権に関しては上演・演奏権※7、隣接権に関しては公衆伝達権※8又はテレビ放送権※9に係る利用を行うこととなり、これらの利用について、権利者から許諾を得なければならないとする(L. 137-2条I、L. 219-2条I)。
そのうえで、権利者の許諾がない場合、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、次のすべての条件を満たしたことを証明しない限り、無許諾利用行為の責任を負わなければならないとする(L. 137-2条III、L. 219-2条III)※10

① 許諾を与えることを望む権利者から許諾を得るために最善の努力をしたこと。
② 権利者から必要な情報の提供を受けた特定の著作物等が確実に利用できないようにするために、この産業部門の専門的注意に係る高度の要求に従って、最善の努力をしたこと。
③権利者から十分に理由を示した通知を受領した後直ちに、通知対象の著作物等へのアクセスをブロックし、又はこれらの著作物等をサービスから削除するために迅速に行動し、かつ、これらの著作物等が将来アップロードされることを防止するために最善の努力をしたこと。

ここで、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、権利者から提供を受けた情報・通知にのみ基づいて行動し(L. 137-2条III第4号、L. 219-2条III第4号)、一般的な監視義務は負わないことが確認されている※11

これらの規定に基づき、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、利用者によってアップロードされた著作物等の利用行為の主体として、権利者から許諾を得るために最善の努力をするとともに、権利者から情報提供を受けた著作物等が確実に利用できないようにするために最善の努力をすること、権利者から通知を受けた著作物等について、迅速にブロックや削除の措置をとり、再アップロード防止のために最善の努力をすることが必要となる。
一方、このような措置は、利用者の適法利用を妨げるおそれもあるため、「利用者の権利」と題する節も設けられている。その中では、前述の規定は、知的所有権法典に規定された権利制限及び権利者からの許諾の範囲内での著作物等の自由利用を妨げることはできないと規定され、具体的には、次のような措置が定められている(L. 137-4条、L. 219-4条)。

●オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、利用者への情報提供として、利用規約において、知的所有権法典に規定されている著作権等の例外又は制限に関する情報を記載する。
●オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダは、利用者が、著作物等へのアクセスのブロック又は著作物等の削除に関する不服申立措置を利用できるようにする。
●利用者からの不服申立後もブロック又は削除の継続を要求する権利者は、その要求を十分に正当化する。
●利用者及び権利者は、利用者からの不服申立に対してオンラインコンテンツ共有サービスプロバイダがとった対応に関する紛争について、裁判所だけでなく、独立公共機関である「インターネット上の著作物の配信及び権利の保護のための高等機関(HADOPI)」にも訴えを提起することができる。

HADOPIについては、このほか、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダがとる著作物等の保護措置の水準に関して勧告を行えることや、利用者によってアップロードされた権利侵害にあたらないコンテンツが利用できるよう権利者とオンラインコンテンツ共有サービスプロバイダの協力を促進する役割も規定されている(L. 331-23-1条I・II)。

Ⅲ.拡大集中ライセンス制度

著作権指令第12条(拡大的効果を有する集中ライセンス)は、一定の条件のもと、集中管理団体が締結する著作物等の利用のためのライセンス契約を、その集中管理団体の構成員ではない者にも適用することを認めている。この規定を受けて、2012年に導入された入手不可能な書籍のデジタル利用に関する特別規定(L. 134-1条以下)を、拡大集中ライセンス制度に対応した内容に修正するとともに、次のような、一般的な拡大集中ライセンス制度が創設された(L. 324-8-1条~L. 324-8-5条)。

●知的所有権法典に規定する場合は、フランスでの利用について、文化担当大臣から認可を受けた集中管理団体によって締結される著作物等の利用許諾契約を、文化担当大臣の命令によって、その集中管理団体の構成員ではない権利者に拡大することができる。集中管理団体がその構成員のために締結した契約を拡大することにより、この集中管理団体は、同種の著作物等について、その構成員ではない権利者も代表することになる。集中管理団体は、代表するすべての権利者の平等な取り扱いを保証する。
●権利者は、自分が構成員ではない集中管理団体が、自分に代わり利用を許諾できることに対し、いつでも異議申立を通知することができる。契約拡大後に通知が行われた場合は、この契約の規定は、可及的速やかに(遅くとも通知から3か月以内)、この権利者に対する効力を失う。
●拡大集中ライセンスを締結できる集中管理団体の認可に際しては、集中管理団体のレパートリーの量や権利者(構成員か否かは問わない)間の分配原則の衡平性などが考慮に入れられる。
●集中管理団体は、認可を受けた後、直ちに、関係権利者に対し、知的所有権法典に規定する場合において、その著作物等の利用許諾契約の交渉をし、この契約の拡大を請求する資格を有しているという事実、及び異議申立権の行使方法を知らせるための公告措置をとる。さらに、利用許諾契約を締結した場合は、締結から7日以内に、文化担当大臣の契約拡大権限に関する情報を関係権利者に確実に通知するための公告措置をとる。
●利用許諾契約を締結した利用者は、集中管理団体が利用から生じる収入を徴収・分配できるよう、利用に関する情報を集中管理団体に提供する。

このように、新たな拡大集中ライセンス制度は、非構成員に制度からの離脱(異議申立権)及び制度の公告を保証したうえで、知的所有権法典に規定する場合には、認可を受けた集中管理団体が締結した利用許諾契約を、文化担当大臣の命令によって、非構成員に拡大することを認める
立法報告書は、拡大集中ライセンス制度は、個人による行使及び伝統的な集中管理では、著作物の利用規模からみて満足いくような回答をもたらすことができない場合にしか適用できないとし、特にこの理由から、拡大集中ライセンス制度が適用される領域を厳密に定義していると説明している※12

このような理解のもと、知的所有権法典では、
①オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダがグラフィック・造形美術の著作者の著作物を利用する場合(L. 137-2-1条)
②教育の過程で著作物等をデジタル形式で利用する場合※13(L. 122-5-4条II第3項、L. 211-3条第1項第3号(e))
③オンライン上でアクセス制限なしに配信される発行物等の説明を目的として高等教育・研究活動においてビジュアル・アートに属する著作物※14を利用する場合(L. 139-1条第1項)
に関して、集中管理団体による利用許諾契約・ライセンスを、文化担当大臣の命令によって構成員ではない権利者に拡大できるとの規定を設け、拡大集中ライセンス制度の適用可能性を認めている。
なお、③については、集中管理団体は、権利者から異議申立通知を受領した場合、それを利用許諾協定の署名者に知らせることも求められている(L. 139-1条第2項)。

Ⅳ. 利用契約における著作者及び実演家の公正な報酬の保証

著作権指令第18条~23条は、利用契約における著作者及び実演家への公正な報酬、具体的には、著作者・実演家に対する適正かつ相当な報酬保証の原則や追加報酬請求権、著作物等の利用報告、著作物等が利用されない場合の撤回権などの保証について定めている。以下では、これらの規定を受けて行われた、(1)報酬、(2)利用報告、(3)終了権に関する知的所有権法典の主な改正内容を、順に見てゆきたい。

(1)報酬

(ⅰ)著作者
フランスでは、古く(1957年法)から、著作者に関しては、比例報酬原則が採用されている。知的所有権法典は、利用契約に関する一般規則の中で、著作者による著作権の「譲渡」※15は、「販売又は利用から生じる収入の比例配分を著作者のために伴わなければならない」として、比例報酬原則を規定したうえで、ただし書きで、一括払いとすることができる場合を限定列挙している(L. 131-4条第1項)※16
また、比例報酬より一括払いの方が著作者に有利な場合もあるため、著作者が要求した場合には、比例報酬を一括年払いに転換することも認めている(L. 131-4条第2項)。
さらに、一括払いで譲渡した場合において、「著作者が、過剰損害又は著作物の収益の不十分な予測により12分の7以上の損害を受けたときは、著作者は、契約の価格条件の改定を要求することができる。」(L. 131-5条I)として、著作物が予想外の大成功をおさめたときなどに、価格改定要求権を付与している。

著作権指令第20条を受けて、これらの規定に、比例報酬で譲渡した場合の追加報酬請求権が追加規定された。これにより、著作者は、「利用契約において最初に規定された比例報酬が、譲受人による利用からその後得られるすべての収入と比較して著しく少ないことが明らかになった場合」には、追加報酬を請求する権利を有することとなった(L. 131-5条II)。
ただし、これらの価格改定要求権・追加報酬請求権の規定は、利用契約又は活動分野に適用される職業協定にこれらと同等の特別規定がある場合には、適用されない(L. 131-5条III)。また、ソフトウェアの著作者にも適用されない(L. 131-5条IV)。

(ⅱ)実演家
一方、実演家には、比例報酬原則は定められていなかったが、新たに、実演家にも比例報酬原則が規定された。著作権指令前文73を受けて、実演家による権利の譲渡は、「実演家のために、譲渡された権利の現実の又は潜在的な経済的価値に対する適正かつ比例的な報酬を伴わなければならない」と規定され、一括払いとすることができる場合が、著作者と同様の場合に限定された(L. 212-3条II第1・2項)。
また、著作者の場合と同様、実演家が要求した場合には、比例報酬を一括年払いに転換することもできる(L.212-3条II第4項)。さらに、追加報酬請求権も付与され、実演家は、利用契約又は活動分野に適用される集団協定等に同等の特別規定がない場合において、「利用契約において最初に規定された報酬が、譲受人による利用からその後得られるすべての収入と比較して著しく少ないことが明らかになった場合」には、追加報酬請求権を有するものとされた(L. 212-3-2条)。

実演家とレコード製作者の間で締結される契約に関する特別規定の中で、ストリーミング配信におけるレコードの利用可能化が最低報酬保証の対象として規定されているが、この最低報酬保証にも比例報酬原則が規定されている(L. 212-14条)。

(2)利用報告

書籍や視聴覚著作物、レコード実演の分野では、すでに、知的所有権法典や映画・動画法典に、譲受人等に利用報告を求める特別規定※17が設けられ、それに基づく各種の協定も締結されていたが、これらを留保したうえで、次のような、ソフトウェアの著作者以外の著作者及び実演家に対する一般的な利用報告規定が新設された(L. 131-5-1条、L. 212-3-1条)。

●著作者・実演家が利用権を移転した場合、譲受人は、少なくとも年1回、利用態様ごとの報酬を区別して、著作物等の利用から生じるすべての収入に関する明確で透明性のある情報を提供する。
●報告の実施条件(報告頻度など)は、活動分野ごとに、著作者・実演家の団体と関係分野の譲受人の団体との間で締結される職業協定で、その詳細を定めることができる。この協定には、寄与が重大ではない著作者・実演家に関する報告の特別条件も定めることができる。
●適用される職業協定がない場合は、契約で報告の方法・時期の詳細を定める。
●譲受人から譲渡を受けた者が前記の情報を保有しており、最初の譲受人が、すべての情報を著作者・実演家に提供しなかった場合は、これらの情報は、譲受人から譲渡を受けた者によって提供される。著作者・実演家の団体と関係分野の譲受人の団体との間で締結される職業協定で、これらの情報の入手条件を定める。
●これらの協定は、文化担当大臣の命令によって、すべての利害関係者に拡大することができる。

このほか、利用報告に関しては、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダによる著作物等の利用を許諾する契約には、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダが、権利者のために、著作物等の利用に関する情報を提供することを定めるよう求める規定が新設されている(L. 137-3条II、L.219-3条II)。

(3)終了権

知的所有権法典は、出版契約に関する特別規定の中で、出版者は、「出版される書籍の絶え間のない継続的な利用を確保する義務を負う。」として出版者に利用義務を課し、この義務が履行されない場合に利用権の譲渡の終了を認めている(L. 132-17-2条)。
また、実演家に関しては、レコード製作者が譲り受けた利用権を使用しないことが明らかな濫用となる場合は、管轄民事裁判所は、適当な措置を命じることができるとしている(L. 212-12条)。

これらの規定の適用可能性も認めたうえで、新たに、次のような、一般的な終了権の規定が新設された(L. 131-5-2条、L. 212-3-3条)。

●排他的に権利を移転した著作者・実演家は、著作物・実演がまったく利用されない場合は、当然に、これらの権利の移転を終了することができる。
●この終了権の行使方法(終了権をいつから行使できるかを含む)は、著作者・実演家の団体と関係分野の譲受人・利用者の団体の間で締結される職業協定等で定める。
●この協定は、文化担当大臣(著作者)・管轄大臣(実演家)の命令によって、すべての利害関係者に拡大することができる。
●著作物等が複数の著作者・実演家の寄与を含んでいる場合には、合意によって終了権を行使しなければならない。合意に達しない場合は、民事裁判所の決定するところによる。

この終了権の規定は、ソフトウェアおよび視聴覚著作物の著作者・実演家には、適用されないが(L. 131-5-2条V、L. 212-3-3条V)、視聴覚著作物に関しては、以前より、「製作者は、職業上の慣行にしたがって、視聴覚著作物の継続的な利用を追求する義務を負う。」との規定があり(L. 132-27条第1項)、この規定の方が、視聴覚著作物の利用方法に適合していると判断されている※18

Ⅴ.おわりに

以上、フランスにおける、デジタル単一市場における著作権指令の国内法化に伴う知的所有権法典の改正内容を概観した。

拡大集中ライセンス制度が新設されるとともに、オンラインコンテンツ共有サービスに関して、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダの責任内容の明確化、グラフィック・造形美術の著作物への拡大集中ライセンス制度の適用、利用報告規定の新設、さらには、独立公共機関(HADOPI)に対する権利者とプロバイダ間の協力を促進する役割の付与など、適法なオンラインコンテンツ共有サービスの利用を促進するための仕組みが整備された。
これらに加えて、著作者・実演家に対する報酬・利用報告・終了権に関する規定の強化も行われており、権利者の保護の強化と著作物の利用の促進をはかる内容であった。
著作権指令の影響のなか、知的所有権法典において、権利者の保護だけでなく、著作物等の流通の促進という視点が取り込まれつつある。



【注】

※1  Loi n° 2019-775 du 24 juillet 2019 tendant à créer un droit voisin au profit des agences de presse et des éditeurs de presse. (▲戻る)
※2 Ordonnance n° 2021-580 du 12 mai 2021 portant transposition du 6 de l'article 2 et des articles 17 à 23 de la directive 2019/790 du Parlement européen et du Conseil du 17 avril 2019 sur le droit d'auteur et les droits voisins dans le marché unique numérique et modifiant les directives 96/9/CE et 2001/29/CE (▲戻る)
※3  Ordonnance n° 2021-1518 du 24 novembre 2021 complétant la transposition de la directive. 2019/790 du Parlement européen et du Conseil du 17 avril 2019 sur le droit d'auteur et les droits voisins dans le marché unique numérique et modifiant les directives 96/9/CE et 2001/29/CE.  (▲戻る)
※4  Directive (EU) 2019/790 of the European Parliament and of the Council of 17 April 2019 on copyright and related rights in the Digital Single Market and amending Directives 96/9/EC and 2001/29/EC  (▲戻る)
※5 著作権指令については、榧野睦子「『バリュー・ギャップ問題』の解決に向けて−EU新指令採択−」(CPRA news Vol. 93,2019年7月)、君塚陽介「デジタル単一市場に対応するドイツ著作権法改正について」(CPRA news ONLINE,2021年10月)も参照。 (▲戻る)
※6 ただし、非営利目的のオンライン百科事典、非営利目的の教育的・学術的リポジトリ、フリーソフトウエアの開発・共有プラットフォーム、欧州電子通信法指令にいう電子通信サービスプロバイダ、オンラインマーケットプレイスプロバイダ、企業間のクラウドサービス、利用者が厳密に私的な使用のためにコンテンツをアップロードすることを認めるクラウドサービスは、オンラインコンテンツ共有サービスプロバイダには含まれない(L. 137-1条第2項)。また、著作権・隣接権の侵害を目的とするオンライン公衆伝達サービスにも、改正規定は適用されない(L. 137-1条第3項)。 (▲戻る)
※7  L. 122-2条第1項は、「上演・演奏」を、「何らかの方法によって著作物を公衆に伝達すること」と規定したうえで、伝達方法の一つとして、「テレビ放送」を例示している。そして、同条第2項は、「テレビ放送」を、「いずれかの性質の音、映像、記録、データ及び伝達事項を、遠隔通信[テレコミュニケーション]のいずれかの方法によって放送すること」と定義しているため、上演・演奏には、インターネット送信も含まれる。 (▲戻る)
※8 公衆伝達権に関する定義規定はないが、著作者の上演・演奏権と同一(A. Lucas et al., Traité de la propriété littéraire et artistique., 5e éd., LexisNexis, 2017, no 1374-1375.)又はこれに類するもの(C. Caron, Droit d'auteur et droits voisins, 6 e éd., LexisNexis, 2020, no 619.)と解されている。 (▲戻る)
※9 隣接権者のうち視聴覚伝企業(放送局等)については、公衆伝達権の内容が、「入場料の支払いと引き換えに公衆が入ることができる場所における」公衆伝達に限定され、別途、テレビ放送権が付与されている(L. 216-1条)。 (▲戻る)
※10 中小企業については、一定条件下、①~③の要件が軽減されている(L. 137-2条III第3号、L. 219-2条III第3号)。 (▲戻る)
※11  JO n°0111 du 13 mai 2021, Texte n° 35.  (▲戻る)
※12  JO n°0274 du 25 nov. 2021, Texte n° 14.  (▲戻る)
※13 教育施設の責任の下で規定の場所・手段で行われる非商業目的での専ら教育における説明を目的とした著作物等の抜粋の利用は、著作権等の例外規定の対象となっており、権利者の許諾なしに行うことができるのが原則であるが(補償金の支払いは必要)、デジタル形式での利用行為については、教育における説明を目的としたこれらの行為を許諾する教育施設のニーズや必要性に対応する十分なライセンスが教育施設に提案された場合は、この例外規定は適用されないとしている(L. 122-5-4条、L. 211-3条第1項第3号(e))。この規定は、著作権指令第5条を受けて定められたものである。 (▲戻る)
※14 具体的には、L. 112-2条第7号から第12号に規定する著作物。 (▲戻る)
※15 知的所有権法典は、特許や商標に関しては、古くから「譲渡(cession)」と「ライセンス(licence)」を区別して規定しているのに対し、著作権に関しては、伝統的に、条文上、「譲渡」の文言しか用いてこなかったため、この「譲渡」の法的性質、たとえばライセンスが含まれるかどうかについては争いがあり、見解が分かれている(たとえば、F. Pollaud-Dulian, Le droit d'auteur, 2e éd., Economica, 2014, no 1345-1346, 1395. A. Lucas et al., op. cit., no 723 et s., C. Caron, op. cit., no 303, 412, 434.)  (▲戻る)
※16 L.131-4条
2 ただし、次の各号に掲げる場合には、著作者の報酬は、一括払金として算定することができる。
(1) 比例配分の算定基礎が実際上決定できない場合
(2) 配分の適用を管理する手段がない場合
(3) 算定及び管理の実施費用が、到達すべき結果と釣合いがとれない場合
(4) 利用の性質又は条件が、著作者の寄与が著作物の知的創作の本質的な要素の一を構成しないため、又は著作物の使用が利用される目的物と比較して付随的な性格しか示さないために、比例報酬の規則の適用を不可能とする場合
(5) ソフトウェアを対象とする権利の譲渡の場合
(6) その他この法典に規定する場合 (▲戻る)
※17 知的所有権法典L. 132-17-3条・L. 132-28条・L. 132-17-8条・L. 212-15条、映画・動画法典L. 213-28条~L.213-37条・L. 251-5条~L. 251-13条。 (▲戻る)
※18 前掲注11参照。 (▲戻る)