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「Music Cross Aid」ライブエンタメ従事者支援基金について

芸団協CPRA 法制広報部

 2020年6月に、(一社)日本音楽事業者協会、(一社)日本音楽制作者連盟、(一社)コンサートプロモーターズ協会の音楽業界3団体が、「Music Cross Aid」ライブエンタメ従事者支援基金を創設した。設立の経緯や現在のライブエンタテインメント業界の状況について、金井文幸氏((一社)日本音楽制作者連盟 常務理事)に話を伺った。

基金設立の経緯

 新型コロナウイルス感染症が急拡大した2020年2月26日に、政府がイベント等の中止・延期・規模縮小等を要請したことを機に、音楽業界3団体では情報共有のための連絡会議を行うようになった。活動再開の目途が立たない中で、主催事業者はじめ公演スタッフ、サポートミュージシャンらには公演活動の継続も危ぶまれるような不安が募っていた。
 関係省庁を通じて政府による支援を要望しながらも、一方で関連スタッフやミュージシャンらからは厳しい声も聞こえ始め、経済的な緊急支援の必要性を感じ、業界内の自助の仕組みとして基金の立ち上げを開始した。

 寄付金控除が可能な形を模索した結果、寄付基金の運営によって寄付推進を行う(公財)パブリックリソース財団と提携し、3団体が発起人という形でMusic Cross Aidを創設することとなった。申請受理や選考基準の設定等、基金の直接的な管理・運営は同財団が行っており、外部有識者で構成される選考委員会が公正に選考している。

政府による支援との違い

 政府の支援策との大きな違いは、第一に即時性である。「J-LODliveコンテンツグローバル需要創出促進事業費補 助金」(経済産業省)等の公的支援は、原則として事業終了後の入金であるため、その間の立替えなど負担が大きい。
 Music Cross Aidは緊急支援という目的があったため、採択決定から入金までを約1か月という仕組みにしている。

 第二に、使途の自由度が高いことである。公的支援は補助対象経費がかなり限定的であるため、Music Cross Aidはライブエンタメ従事者の今後の活動に役立てられるよう、制限をできるだけ排除して実態に即した利用しやすい制度を目指した。

 回を重ねるごとに応募件数は増えている。コロナ禍が長期化する中で状況はますます厳しくなっており、支援の必 要性も増している。

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寄付という形で示す応援の気持ち

 設立当初より、一般の音楽ファンからの心がこもった寄付金の他、アーティストからも配信ライブやグッズの売り上げの一部を寄付する等、様々な形の協力表明がある。また、グローバルな音楽・映像配信サービス事業者からの支援も大きく、継続的な寄付の申し出もある。金額の多寡ではなく、この基金が、ライブエンタテインメント業界を応援する気持ちを「寄付金」という形で表す際の受け皿となっている。

 望ましいことは、安心して活動ができる状態になり、一日も早くこの基金が役割を終えることである。それまで、応援する姿勢を寄付金の形で受け止め、ライブエンタテインメントに携わる人たちへ渡し、鑑賞機会を提供するための一助として継続していかなければならないだろう。

今後の支援の在り方について

 未曽有の状況において、政府の支援策が設けられたことは画期的だが、活動が制限された業界全体を網羅する支援とは言えない。また、ライブエンタテインメントは、公演に向けて数年前からスケジュール調整を要する場合も多く、中止したものを再演することは容易でない。業界の実態に沿った今後の支援については、関係省庁にも引き続き相談していきたい。

 エンタテインメントは、衣食住との単純比較はできないが、心身ともに健全な生活を送っていくためには必要だ。新型コロナウイルス感染予防対策ガイドラインの策定以降は、徹底した対策のもとで開催しており、客席内でのクラスターが発生したという事例はない。

 行動ルールを守れば、コンサート会場は決して怖い場所ではないことを周知する心理的支援も、ライブエンタテインメント活動の真の再開に向けては必要ではないだろうか。