各委員会を中心としたCPRAの取り組みについて
芸団協CPRA
9月27日に開催された権利者団体会議において、平成30・31(2018・2019)年度CPRA運営委員が選出された。これを受けて、10月5日に開催された運営委員会では、崎元讓運営委員長、中井秀範副委員長及び金井文幸副委員長が選出され、前期同様、運営委員会の下に七つの諮問委員会の設置とともに、担当運営委員を決定した。
CPRA運営委員会の新体制の決定を踏まえて、崎元讓運営委員長のほか、七つの諮問委員会の担当運営委員に、コメントをお願いした。
CPRA新体制にあたって
今年設立25周年を迎えた芸団協実演家著作隣接権センター(CPRA)は、実演家の著作隣接権処理業務を適正に行うための専門機関としての活動を続けている。
組織としては、「権利者団体会議」(現在は4名の委員)、「運営委員会」(現在は13名の運営委員)を設置して、独立性、権利者性及び透明性の高い運営を行っている。
平成30・31(2018・2019)年度の運営体制がスタートした。今期は、権利者団体会議の委員、運営委員ともに前期のメンバーが全員再任された。運営委員会の委員長は引き続き私が務めることになった。副委員長には、中井秀範委員と金井文幸委員が就任した。
今期の諮問委員会については、前期と同様に専門性の高い委員会を設置し、運営委員、各権利者団体、学識経験者から適任者を選任した。また、時代の変化に対応すべく設置さ
れた「権利問題研究プロジェクトチーム」についても、引き続き実演と権利に関する問題を検討し、実行する体制の構築を目途に活動していく。
昨年、今年と、関係者向けに開催した「レコード演奏権・伝達権」や「ウェブキャスティング」、「バリュー・ギャップ問題」などに関する勉強会は大変好評であった。今期も公衆への伝達に係る問題にとどまることなく、社会状況や技術動向に合わせた問題を取り上げて積極的に勉強会等を開催していきたい。また、文化庁移転問題や、「五輪の年には文化省」をスローガンに活動している「文化省創設キャンペーン」にも文化芸術推進フォーラムを通して積極的に参加していく。これらの諸問題に対しては権利者団体会議、運営委員会、各諮問委員会及び事務局が一丸となって活動していくことが大切である。引き続き関係各位の協力とご指導、ご鞭撻のほどをお願いする。
芸団協CPRA運営委員長 崎元 讓
法制広報について
デジタル技術、ネットインフラの発展により音楽を楽しむ手段が多様化し、配信とりわけサブスクリプション型のサービスが主流となっていますが、残念ながら実演家が適切かつ公平な対価を得られていない現状があります。法制広報委員会ではこうした問題意識の下、「公衆への伝達」をはじめとした実演家の権利に関わる諸課題を検討し、制度改正に向けて活動するとともに、広報物やセミナー等を活用して積極的に情報発信していきます。
ウェブキャスティングについては、NHKの常時同時配信等を契機とした政府内の議論が加速しており、実演家の権利もこれらの議論の影響を受けることは間違いありません。議論を見守るだけでなく、集中管理等によって実演家の報酬を確保しつつ、ユーザーが使い易い制度を積極的に提案していきたいと考えています。国際的な動向に目を向ければ、EUやアメリカだけではなく、韓国を始めとするアジア諸国でも大規模な制度改正に向けた動きが活発になっています。特にEUでは、ユーザー投稿型の配信サービスに関する著作権法上の規制が議論されており、これらのサービスに関しては、実演家やクリエイターに対して、他の配信サービスと比較して極めて低い対価しか支払っていないという、いわゆる「バリュー・ギャップ問題」が提起されており、CPRAでも情報収集と検討を継続し、発信に努めたいと思います。(中井秀範運営副委員長)
総務について
昨年度のCPRA事業の徴収総額は前年比99.2%となり、ほぼ横ばいの結果となったが、貸レコード使用料・報酬については前年比87.7%と五期連続の減収となった。また、二次使用料等については徴収額が増加したものの、伝統的な放送に類似したサービスがネット上でも展開されつつある。
このような環境変化に対応するため、今後もCPRAの基本理念である「専門性」「独立性」「透明性」について、より一層高い運営を維持しなければならない。そして、集中管理を拡大するとともに、集中
管理団体として遵守すべき重要な要件の一つである「公平・公正」な分配を実現するため、権利者団体会議、運営委員会及び各諮問委員会の運営を円滑に行い、世代交代も見据えた事務局体制の構築を推進したい。(安部次郎運営委員)
二次使用料について
放送二次使用料を中心としたレコード実演の徴収総額は、2017年度に73億円に至った。徴収額の大半を占めている日本民間放送連盟(民放連)やNHKなどの放送事業者との折衝を業務として行ってきた。しかし、テレビの視聴時間やスポンサー収入は減少傾向であり、近い将来、ネットがテレビの広告費を逆転すると予測されている。
東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に向けて、テレビ放送は4K・8K放送が開始され大画面・高精細化が進んでいる。一方、通信環境は5G時代に突入し、スマートフォンで視聴できる動画等のネット配信は更に便利になる。このような環境変化を踏まえ、ネット配信関連の集中管理の拡充は、最も重要な項目の一つであると考えている。
著作権等管理事業者として、放送番組のネット配信において利用されるレコード実演の集中管理を開始し、12年が経過した。この間、放送業界を取り巻く環境は大きく変容し、ネット配信との関係が深まっている。当初、放送番組のネット配信は、radiko等のラジオの同時配信や、テレビ番組のVODが主流であったが、2019年度にはNHKが地上テレビ2チャンネルの常時同時配信を予定するなど、配信を行う事業者数の拡大が見込まれる。CPRAとしては、そのような変容する時代のニーズに応えるべく、また実演家に広く対価を還元できるよう、集中管理事業の整備・運用を進めていきたい。(上野博運営委員)
貸レコード使用料について
CDの生産実績が毎年減少している中、音楽配信、とりわけサブスクリプションサービスが大きな成長を遂げている。これはCDやダウンロードによって音楽を聴くことから、より手軽な方法に変わりつつあることを示している。通信環境の高度化が進み、楽曲の品揃えが整えば、更に普及し定着していくものと思われる。もちろん、音楽配信が遥かに進んでいる海外に比べ、CDの購入は根強く残っているが、純粋に聴取のためというよりも、アーティストの応援のため、またCDに付属する特典目当てとも言われている。
このような環境の変化の中で、CDレンタルは厳しい状況に置かれている。しかし、貸レコード使用料は、CPRA徴収額の15%程度を占めており、また現時点で大手事業者を中心とした1,900以上もの店舗でCDレンタルが行われているのも事実である。日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合(CDV-J)と貸レコードの誕生からこれまで長きに亘って構築してきたルールに基づき、市場のニーズが続く限り、CPRAとしては文化庁長官の指定団体業務として適正な対価を徴収していかなければならない。さらに、その運用についても、必要に応じて合理的な調整を行う必要がある。使用料滞納事業者等の諸課題について、CDV-Jとの協力関係を保ちつつ、対応していきたい。(金井文幸運営副委員長)
音楽関連分配について
音楽分配では、ここ数年分配の精緻化に向けて分配方法の見直し等の検討を行っている。
その結果、貸レコード使用料および商業用レコード二次使用料フィーチャード・アーティスト分配については規程の改正を行い、新たな方法による分配を実施するに至った。現在は、商業用レコード二次使用料ノンフィーチャード・アーティストの分配方法の見直しに着手し、「みなしデータ」から「実際に放送で使用された楽曲に参加している演奏家」に分配する方法への移行を目指し、CPRAが過去に蓄積してきた貸レコードの演奏家データや団体が保有する演奏参加データと放送使用楽曲の照合結果の分析や、楽曲参加者情報の収集方法等の調査を行っている。
また、将来に向け楽曲に参加する演奏家の氏名表示の必要性を関係者に啓発する運動も視野にいれ、引き続き関係団体の協力を得ながら分配精度向上のための検討を重ねていきたい。
また、文化庁が実施している権利情報集約化に向けた実証事業にCPRAも参加している中で、CPRAに有益な情報が得られる可能性について、今後の状況を見守りながら模索していきたい。(椎名和夫運営委員)
海外徴収・分配について
昨年度末現在の海外団体との契約数は32か国41団体である。
また昨年度は、SCAPR (実演家権利管理団体協議会)が運用する実演家データベース(IPD)へのCPRA委任者の登録を開始した。これにより、IPDに登録されている実演家の個人識別番号(IPN)を分配時の権利者特定の必須条件としている団体からの使用料等の徴収が再開された。もう一方の作品データベース(VRDB)についても本年9月から音楽作品の登録を開始したところである。これまでは各団体からそれぞれ年に一度リストとして送られてきた権利者不明楽曲がVRDBにおいては随時検索できることなどから、今後は両データベースの情報を有効活用し、より一層の海外徴収の強化が期待できる。
また、2010年度以降実施しているアジア地域の団体を対象とした実務研修では、韓国FKMP、マレーシアRPMに続いて昨年度招聘したインドISRAとの間で、年内にも使用料等の徴収分配が実施される予定となっている。今後も設立間もないアジアの団体の実務面からの育成支援を継続していくとともに、現在アジア地域に存在する7か国8団体が一堂に会し全体の連携強化を図るためのフォーラムを韓国FKMPとの協力のもとで企画し、CPRAのプレゼンスを高めるとともにアジア地域からの将来的な徴収額の増加を目指したい。(安部次郎運営委員)
データセンター推進について
データセンター推進委員会では、音楽関連分配委員会で継続して議論されている分配の精度向上に向けた調査・研究の中で、データ関連の検証をサポートするとともに、分配方法の変更
にも柔軟に対応し得る拡張性を持ったシステムづくりを進めていく。
また、関係団体の連携強化の一環として利用している「権利者団体連携システムMAPS」については、情報の機密性を保持しつつ、これまで以上に各団体実務者の利便性に配慮した運用ルールを構築していきたい。それに加えて、課題対応が難しくなっている機能が発生しつつあることから、抜本的な見直しも視野に入れた検討を実施し、より円滑に団体間の連携が図れるよう努めていく。
一方、文化庁では権利情報集約化に向けた実証事業として、関係団体・企業を構成員とした権利情報集約化等協議会を設置し検討が行われている。CPRAとしても、データ集約化のスキームが構築されることによって、課題であったインディーズ等のデータ収集においても大きな効果をもたらすことが期待されるため、今後とも協力を継続していきたい。(椎名和夫運営委員)