エンターテインメント業界に未来はあるのか
芸団協CPRA権利者団体会議 議長/一般社団法人日本音楽事業者協会 会長 堀 義貴
CPRAを取り巻くエンターテインメント業界の課題について考えてみたい。短期的な課題としては、2020年に開催を控えている東京オリンピック・パラリンピック、中長期的には日本の人口減少という課題がある。これらの課題は、常にパラレルに考えていかなければならない。
2020年東京オリンピック・パラリンピックは、日本のエンターテインメントを世界に発信する、またとない好機と言えるかもしれない。しかしながら、オリンピック期間中を含め開催までの数か月の間は、コンサートなどのために使えなくなる会場も出て、総キャパシティが減少する上、ボランティアに参加する人の数を考えれば、運営スタッフのアルバイトの確保も難しくなるかもしれない。さらに、オリンピック関連番組に、放送番組のゴールデン、プライム枠を取られてしまい、出演の機会が大幅に減るかもしれない。エンターテインメント業界全体として、今からオリンピック期間を乗り切る体力を備えなければならない。
そして、中長期的な課題である日本の人口減少。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は、2053年には1億人を割って9,924万人、2065年には8,808万人になるといわれている。このような日本の人口減少は、観る人、出演する人、創る人という日本のエンターテインメント業界に携わる全ての人の数が減ることを意味する。
世界最大の人口を擁する中国では、映画市場は右肩上がりで成長し続け、2017年には北米の映画市場のおよそ75%に達したほか、数年以内には北米の映画市場を抜くと言われている。さらに、音楽市場においても世界のトップ10に初めて入るなどエンターテインメント業界が盛況だ。出演料は日本とは比べものにならないほど高額になっている。また、中国国内のいたるところにアニメーションスタジオも建設されているという。日本のクリエーターたちが、中国に流出してしまえば、ただでさえ日本の人口が減少している中で、日本にクリエーターの空洞化を招きかねない。
限界ある日本国内のエンターテインメント市場のほか、海外市場に打って出ようとする考え方もある。確かに、海外市場の開拓は、1秒たりとも忘れてはならない。海外に著作権などの使用料を支払うだけではなく、日本に支払われるようにしなければならない。しかしながら、海外に出て、マーケットを切り開くことは、並大抵の努力だけでは実現できるものではない。
インターネットの場合はどうか。名前を出すまでもなく、インターネットの世界ではグーグル、アマゾンといったアメリカのプラットフォーマーが牛耳っている。国境のないインターネットという世界に乗り出していくにも、日本の権利者は、プラットフォーマーの条件をのまざるを得ない状況だ。
今年10月1日にCPRAは設立25年を迎えた。しかしながら、日本のエンターテインメント業界では課題が山積しており、明るい未来が描けるとは言い難い。このようなエンターテインメント業界において、現状のままCPRAが胡坐をかいていては、CPRAは次の30年、50年を迎えることはできない。CPRAの運営に携わる全ての者が危機意識をもって、然るべき知識や見識を備え、今から、将来について考えなければない。関係各位には引き続きご協力をお願いしたい。