次世代に向けて
芸団協CPRA権利者団体会議 委員/一般社団法人日本音楽制作者連盟 理事長 門池三則
私がCPRAの構成団体4団体の代表からなる権利者団体会議に出席し始めてから間もなく三年になります。この間だけでも音楽ビジネスはとても大きな変容を遂げています。CDやデジタル配信などの音源ビジネスで利益を上げることが、いよいよもって容易でなくなりました。そこで当連盟会員も持続的なアーティスト活動を求めて、コンサート収益へのシフトを進めてきましたが、こちらも課題が山積しています。①コンサートチケット高額転売への対応、②2020年東京五輪の影響による首都圏の会場不足、③会場アルバイトなど人材確保の問題というように次々に解決すべき事案が噴出してきています。
すでに一定の知名度を有し、集客力のあるアーティストであれば、これまで通り新しい作品を発表しながらコンサートツアーを組み全国各地で公演するという活動を継続していけると思いますが、次世代のアーティストを世に送り出すとなると本当に大変です。十年後の音楽産業、音楽文化を想像するとゾッとしてしまいます。
家庭の中ではテレビやスマホに加え、スマートスピーカーからも音楽は届けられていると思います。街に繰り出せば、飲食店でも、ヘアサロンやアパレルショップでも、どこへ行っても音楽が鳴り響いています。音楽はこれからも人々の生活の中で生き続け、愉しまれ続けるのでしょう。しかし、今のままで、十年後、二十年後も私たちは果たしてアーティストの創作活動を続けていられるのでしょうか。
EU諸国では、街なかで音楽が使用されることに対して公衆伝達権という権利があり、作家やアーティスト、レコード会社等は使用料を受け取っています。
我が国でも著作者である作家に限り権利が付与されており、JASRACが徴収を行っていますが、なかなか人々の理解を得ることに苦労されています。将来の音楽文化を一層開花させるためにも、また次世代のアーティストやミュージシャンを輩出し続けるためにもCPRAは関係諸団体と連携して、諸外国から遅れをとらないような権利擁護を目指して活動していかなければならないと考えます。そのためにも音楽ファンや一般社会への啓発、理解を求める情報発信を始めていくべきでしょう。
さらには、権利拡大に併せて、実演家の権利を扱う団体として、権利処理のためのデータの充実も必要になります。デジタル化によって、いつ、どこで、どんな作品が使用されたのかという音楽使用実績の収集については益々進歩していくでしょう。しかしながら、それぞれの作品に関わるアーティストやミュージシャンなどの実演家を特定していくことは、簡単ではありません。有名なヒット曲であればともかくも、数十年前にレコーディングされた作品を遡ってデータ化するには、大きな労力と費用も必要となります。それでも将来の権利主張を目指す基盤整備として、実演家データ収集に取り組んでいきたいと思います。