SANZUI vol.09_2016 winter

美匠熟考

Photo:Anna Hosokawa

Number:017 koto二十五絃箏谷垣内和子(日本音楽研究者)

日本を代表する楽器「コト」。「こゑいと」が語源だという説がある。祈りの声を絃に託す姿を表したものだろうか。古来、さまざまな「コト」が存在し、伝統音楽では十三絃の箏が活躍する。

翻って現代の「コト」。二十五絃箏は、箏演奏家の野坂惠子の探求心から生まれた。しっかと地を捉える二本の足。二十五個の眼が煌く。真っ直ぐに伸びる絃に整然と並ぶ琴柱。音が奏でられる一瞬を待ち構える。

箏は一つの音の響きが「命」。一音を充実した深い音に響かせ、もっと自由に表現したい。それには二十五本の絃が必要だったと野坂は言う。作曲家や音響学者、楽器製作者等、さまざまなプロの力を結集し、1991年に完成した。全長約180cm。長さだけならば、通常の箏と変わらない。しかし、現代の「コト」は新たな創作活動の原動力となり、箏曲の世界を拡大し続けている。

Number:018 Scissors二代目林家正楽の鋏林家二楽(紙切り師)

「鋏は嘘をつかない。お前が苦労した分だけうまくなる」。何でもそうでしょうが、入門後は、必死で稽古をしました。手には必然的にタコができる。これがグリップになって、鋏の位置の目安になるんです。生前父は私ほど大きなタコはなかったので、うまい力加減になっていたのかもしれません。

「紙切り」はリクエストをいただいて、切るプロセスも楽しんでもらいます。時事的なお題もどう切るか。自分が知らないものは、生みの苦しみも見てもらって評価してもらう。「紙切りは、なんでも受け止めるべきだ」というのが父のポリシーでした。トリの師匠方がアクシデントで遅れたら、その前の紙切りで間をつながないといけない。父は春日部訛りから落語家をあきらめたけど、そのぶん話芸も評判がよかった。名人と言われても、お客さんに芸を楽しんでもらいたい、その一心でした。


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