SANZUI vol.07_2015 spring

ロングインタビュー 郷ひろみ

Photo / Ko Hosokawa   Text / Makoto Hasegawa

ジャパニーズ・ポップスのど真ん中を行くんだって
吹っ切れてからは怖いものはないですね

心にサーモスタットをかけず、
温度を上げていくことが大切

名前の「GO」という響きは郷ひろみさんの音楽に向かう姿勢を的確に表しているのではないだろうか。もっと前へ。もっと先へ。70年代から現在まで、ジャパニーズ・ポップスのど真ん中を歩みながら、今もなお輝き続けている。この秋には60歳を迎え、100枚目のシングルも予定されている。ライブでは歌って、踊って、話して、観客を惚れ惚れさせる。このパワーは一体どこから来るのだろうか?

――ステージに立つうえで心がけていることはありますか?

1本1本のステージ、1曲1曲の歌を大切にして最善を尽くしてパフォーマンスしていくことですね。なぜそうするかというと、客席には間違いなく僕よりも優れた人が観ているに違いないと思うからです。自分は総合点はそれなりに高いかもしれないけれど、僕よりも歌が上手い人がいる、僕よりも動きのいい人はいると常に思っているので、驕ってはいけない、手を抜いてはいけないと肝に銘じてます。

――40数年やり続けて、今も進化し続けているのがすごいと思います。

僕は変化していかないと、進化はないと思っているんですよ。変化の先にしか進化はない。毎年行うツアーの中でいかにして今までとの違いを見せるか。その変化の積み重ねが進化に繋がっていくと考えています。

――変化自体はどうやってもたらされるものなんでしょうか?

 日々の積み重ねが基本ですね。練習して100パーセント出来たと思ったら、普通はそこで終わりますよね。でも実は出来たってところからが勝負なんですよ。歌にしても、やればやるほど、隙間が見えてくる。これは100をやった人間じゃないと見えてこないもので。100をやる過程で不十分なところが見えてくるのは当たり前。100をやってそこからさらにやり続けると必ず隙間が見えて来るんです。その隙間を埋める作業を出来るかどうかが勝負。それは僕は何年か前に知りました。これは終わりがないんだなって。

――郷さんの成長への強い意志はどこから来るのでしょうか?

自分はまだまだだという意識があるからでしょうね。それと、心にサーモスタットをかけないようにしているからでしょうね。そうすると、モチベーションの温度を上げていける。僕自身、自分の人生の成功は60代から始まる、それからの10年間がベストになっていくだろうなと思っていました。根拠もあります。成功とは多分、もがいて苦しむことを続けてきた人間しか手に出来ないものなんでしょうね。自分ももがき苦しみながらここまでやってきたので、やっと成功へのスタートラインに立てた(笑)ところだなと思っています。

100 枚目のシングルも
自分の中では通過点のひとつ

――著書『NEXT』の中で〝曲との出会いが自分を育てた〞と書かれていましたが、曲に育てられるというのは具体的にはどういうことでしょうか?

誰でもそうですが、デビューして2、3年たつと、まわりのことが見えてきて、自分自身のことも少しは客観的に見れるようになってくるんですよね。僕にもその時期が来て、自己分析したら、これはひどいなと(笑)。歌もダンスも自分が思い描いているイメージからはほど遠かった。なんとかしないと先がないなって気づきがあった中で出会ったのが筒美京平先生からいただいた『よろしく哀愁』でした。この曲をしっかり表現出来る自分にならないといけないと思いました。

――ターニング・ポイントで様々な曲と出会ってきているわけですね。

そうですね。『お嫁サンバ』と出会った時はメロディをいただいて素晴らしい曲だと思って、その後、歌詞が来たら、〝1・2・3バ、2・2・3バ〞で、なんだ、これは?って(笑)。

――確かに、あの歌詞はインパクトがありますね。

プロデューサーに自分が抱いた疑問をぶつけたら、「これはいつまでも歌い継がれていく歌になりますから」って。そんな先のことがどうしてわかるんだろうと思ったんですが、「この歌を明るく歌えるのはあなたしかいない」と言われて、納得して歌って、出来上がったのが『お嫁サンバ』。その経験を後に活かすことも出来ました。

――というと?

「『GOLDFINGER '99』という曲と出会った時、日本語詞を康珍化さんに書いていただいたんですが、最初は〝ACHI CHI A CHI〞の後は英語の歌詞が入っていたんですよ。『お嫁サンバ』の経験があって、キャッチーということが自分の中で消化されていたので、康珍化さんに、「〝A CHI CHI A CHI〞を連発させていきましょう」と提案して、あの形になりました。これまでに99枚のシングルを出してきてますが、そこでの経験がどこかで活かされて、何年かたって振り返った時に、成長させてもらったんだと気がつきました。

――次のシングルで100枚って、おそらく前人未到の記録だと思います。コンスタントに最前線で活動している証しなのではないですか?

アメリカに行って、休んだ時期もありましたが、それでも100という数字に到達出来るのは自分でも誇れることだとは思います。でもこれはファンの人がいたから、そして多くの人が支えてくれたからで、僕だけの力じゃないですよね。もちろん感慨深くはあるんですが、ただ僕の中では通過点と思っています。

――著書で〝歌は自分の天職〞と書かれていますが、そう確信したのは?

ある時期が来るまではなかなかそうは思えなかったんです。40代の後半なのかな。自分自身の音楽について、吹っ切れてからですね。僕だけでなく、長く仕事を続けている方はみなさん、いろんな時代があると思うんです。画家だったら、明るい色使いになったり、暗い色使いになったり、時代によって、作風が変わっていく。同じように僕も『お嫁サンバ』の時期もあれば、バラード3部作の時期もあれば、もっとかっこいい歌を歌いたいと思った時期もあった。そして〝ジャパ〜ン〞(『2億4千万の瞳―エキゾチック・ジャパン―』)って歌うのはもういいかなって時期もあった。でもどこかで吹っ切れたんでしょうね。かっこいい曲は他の人に任せて、郷ひろみは歌謡曲のど真ん中、ジャパニーズ・ポップスのど真ん中を行くべきなんだなって。

――そう感じた直接的なきっかけはあったんでしょうか?

たくさんの複合的な要素があって、自然に悟っていったんだと思います。〝ジャパ〜ン〞でいいんだ、〝1・2・3バ〞でいいんだって吹っ切れてからは、もう怖いものはないですね。
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