SANZUI vol.07_2015 spring

特集 ホレボレ

青春の頃、誰もが通る「惚れ惚れ」という道がある。
憧れのアイドルやアーティストに夢中になって、
その姿や音楽、パフォーマンスが、寝ても覚めても頭の中から離れない。
しかし、大人になっても、「惚れ惚れ」している人がいる。
舞台の上の演者を見つめて、うっとりして、ぼんやりして、
目がハートマークになっている人がいる。
歌い、叫び、そして、その「惚れ惚れ」という思いは、
人生に若さや輝きを与え、力強く生きるパワーになっている。
「惚れ惚れ」って、素晴らしい。

意外性に満ちた演出
新しいことに挑む、コクーン歌舞伎いとうせいこう

Photo / Akio

コクーン歌舞伎では『佐倉義民傳』のお手伝いをさせていただいた。義太夫節での詞章をすべて韻文にし、ラップとしてリズムに載せるという試みの担当であった。妙に目新しいことをやったイメージがあるが、当時何回か書いたように歌舞伎は音楽劇なのでその時代ごとに流行した節を積極的に使ったのである。その意味では私たちはヒップホップ節を歌舞伎に取り入れただけだ。こうした「伝統の原則に忠実であることで逆に新しいことに挑む」姿勢がコクーン歌舞伎の基本になっていると思う。公演時はよく大部屋にいた。役者のラップを修正するためである。座付き作家の気分を存分に味わわせてくれたのもコクーンだ。


いとうせいこう
1961年、東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、出版社の編集を経て、音楽や舞台、テレビなどの分野でも活躍。
(※情報は発行当時)


コクーン歌舞伎

東京・渋谷のBunkamura内の劇場、シアターコクーンで行われる歌舞伎公演。初演は1994年。1996年以降は串田和美が演出を務め、古典歌舞伎の演目を新たに演出している。本水、本泥の使用やポップミュージシャンの起用など話題を呼んでいる他、客席には座布団の「平場席」が設けられるなど、現代の劇場で歌舞伎公演の雰囲気が味わえる。2014年上演の『三人吉三』は、シネマ歌舞伎として映像化され、2015年6月27日(土)より公開される。


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