SANZUI vol.05_2014 autumn

特集 ドキドキ

舞台の魔法
たとえば、男が女になる。たとえば、女が男になる。
たとえば、若者が年寄りになる。たとえば、現代人が未来人になる。
舞台の上で、ドラマの中で、さまざまな演者が、
鮮やかな「変身という魔法」を見せてくれる。
華やかな「変身という魔法」で魅せてくれる。
しかし、それは、魔法などという簡単なものではなく、
演者の一生における努力の結晶であり、
変身しても変わることのない強い意志であることをあなたは知るだろう。

氷川きよし歌手
一番遠い席のお客様にも 感謝の気持ちを歌声で届けたい。

Photo / Ko Hosokawa   Text / Seiichi Tanbata

「よろしくお願いします」。服装はカジュアルだが律儀な笑顔であった。そして国民的スター歌手と向かい合わせで会話が弾んだ。歌手デビューは2000年。曲名は「箱根八里の半次郎」。衣裳から曲調まで古風な股旅演歌。身長178センチ、端正な風貌とは真逆な路線にもかかわらず、瞬く間にF 2層(30代の女性)を中心に圧倒的な人気を集め、大晦日には新人ながら「第51回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。以来、14回連続出場の記録を更新する。スター街道の始まりだ。

「アルバイトしながら見ていた番組に出場できたことにびっくりでした」。嬉しいドキドキ感の裏には、「この先、どうなるだろうか」という不安がつきまとっていたと明かす。股旅路線は第2弾「大井追っかけ音次郎」へと続き、第3弾の「きよしのズンドコ節」で、客席のペンライトの大躍動に進むべき灯りが見えたという。さらに「星空の秋子」に続き、台詞入りで朗々と歌い上げる「白雲の城」へと領域を広げ、3年後、「一剣」で栄えある第48回日本レコード大賞を受賞。歌謡界の頂点に登りつめた。目元は潤んいたが涙はなかった。26歳の暮れであった。

 氷川さんは「和服が好きなんです」と嬉しそうに、笑顔で話す。デビュー15周年記念曲「大利根流れ月」の主人公は幕末の剣豪平手造酒。「彼の若い頃の着流し姿に扮していると、違う自分になれる。舞台俳優が見栄を切るときみたいです」。和装のドキドキ感について目を見開き、身を乗り出して話す。しかし声は優しい。

 氷川さんならずとも歌手の醍醐味に「ライブ」がある。昨年は、「3日に1日(2 回)公演」というハイぺースで全国各地へコンサートツアーに出た。最終公演は、東京有楽町の国際フォーラムAホール(定員5,012席)で迎えた。舞台は4階建ての高さ。「一番高い席まで昇ってみました。そこからはステージ上の自分は豆粒程度にしか見えないことを実感しました。それでも観に来てくださるファンがいる。その人にも声を届くように心を込めて歌っています」。歌手の生命である「のど」についても同様だ。「いつでも最良の声で歌えるように。睡眠、大声で喋らない。ストレスがたまらない音をさがすこと」と「のど」のケアに努めていると明かす。スターの最大条件、「気配り」の男でもある。

 したがって満員の客席は「きよしぃ~」コールと「サイリウムライト」の花盛り。今年は15周年の記念公演として、10月7・8両日、日本武道館で単独公演を行う。「武道館はただ広いだけでなく歌手にとっては最適な場所です。15年の歩みを感じ取ってもらい、感謝の気持ちを伝えたい」と願っている。氷川さんは最新のアルバム「昭和の演歌名曲集」で歌謡界の大先輩村田英雄の十八番「無法松の一生」を歌唱した。「ストーリーがいい。メロディーもいい」と浪曲演歌に挑戦した。氷川さんは、歌うときにいつも心掛けていることがある。「悲しい歌でも笑顔で締めた方がいい」と。話題の主役、氷川きよしは9月で37歳になる。彼の歌声と笑顔は混濁の日本を明るくしてくれる。


PROFILE 福岡県出身。2000年、日本コロムビア創立90周年記念アーティストとして、シングル「箱根八里の半次郎」でデビュー。「やだねったら、やだね」のフレーズは日本新語・流行語大賞に選ばれるなど、一大旋風を巻き起こし、150万枚のセールスを記録。第42回日本レコード大賞最優秀新人賞、第15回日本ゴールドディスク大賞 ソング・オブ・ザ・イヤー(演歌・歌謡曲部門)他受賞多数。9月17日(水)に新シングル「ちょいときまぐれ渡り鳥」を発売。http://www.nagarapro.co.jp(※情報は発行当時)

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