SANZUI vol.02_2013 autumn

カンゲキのススメ

Illustration / Takao Nakagawa

vol.2寄席

落語とは「滑稽」な話しであり、オチ(下げ)がつく話芸である。題材は身の回りの世間話からお伽噺まで幅広い。手拭いと扇子だけを小道具に使い、1人で何役もこなし、巧みに客を話しに引き込んでしまう。落語は戦国時代に生まれ、時代の空気を取り入れながら長い時間をかけて日本人の心に染み込んできた。子供も大人も楽しめる、いわば笑いの原点ともいえる。秋から年末、正月のおめでたい初席(はつせき)にかけて寄席の演目も充実し、落語会も多数開催される。泣いて笑って、落語の魅力にどっぷりと浸かってみたい。

一年中落語を楽しめる笑いの殿堂

落語は伝統芸能といわれているので、格式が高く見方が難しいのではないのか?そんな心配はご無用。常打ちの寄席(よせ)に行けば、一年中いつでも落語を楽しめる。一ヶ月を上席、中席、下席と10日ごとに分け、それぞれ出演者と演目が替わる。一日の中でも昼の部と夜の部があり、こちらも出演者と演目が替わる。入り口で木戸銭を払い、中に入ると正面に高座と呼ばれる演芸をする舞台がある。寄席は全て自由席。どこに座ってもいい。落語家の息づかいを聞くなら一番前のかぶりつき。高座と観客の一体感を楽しみたいなら後部座席がお薦め。落語の見方に決まりごとはない。とにかく気楽に一度足を運んで腹を抱えて笑って欲しい。クセになること間違いなし。

出囃子とめくりも笑いの引き立て役

寄席では落語家をメインに色物と呼ばれる落語以外の音曲、手品、漫才、曲芸などの芸人が次々と高座に上がって楽しませてくれる。次に誰が出るのかがわかるように前座が「めくり」と呼ばれる高座の端に置いてある名札をめくる。寄席文字と呼ばれる独特の書体で書かれており、江戸情緒と粋さを醸し出す。そして落語家が続いて高座に上がる場合は、高座返しといって前座が座布団を必ず引っ繰り返す。出囃子に乗って落語家の登場。出囃子とは楽屋で演ずる三味線のお囃子のことで二つ目と真打ち(落語家のランク)の落語家ごとに曲が定まっている。落語通になると出囃子を聞くだけで誰が出てくるのかすぐわかる。

寄席太鼓は縁起物!

寄席では太鼓によっても気分を盛り上げてくれる。開場と同時に前座が「大勢いらして下さい」との願いを込めて大太鼓を打ち込む。最初に太鼓の縁をカラカラカラと叩くのは、木戸口が開く音 。そして「ドンドンドントコイ、金持ってどんと来い」と聞こえるような打ち方をする。そして打ち上げる最後のところで、長バチを〔入〕という字の形にして太鼓の表面を押さえる。「大入り」になる様にとの縁起かつぎだ。終演時に打つのがハネ太鼓、追い出しとも言う。「デテケ(出てけ)、デテケ」と打ち、木戸を出て客はいろいろな方角へ帰るので、「テンテンバラバラ、テンテンバラバラ」。客席から客が全員出たら、太鼓の縁をたたいて、「カラ(空)、カラ、カラ」と打ち、最後に太鼓の縁をバチでこすって、「ギー」と木戸の鍵を降ろしたという擬音を出して、その日の興行が全て終了する。

寄席にはお弁当が良く似合う

医学的にみても笑うことは体に良い。免疫力をぐんと上げて、体も脳も若返ることが証明されている。笑うと代謝が良くなり、食欲がわいてくる。落語で立て続けに大笑いすると当然体力を使い、お腹が鳴ってくる。寄席の楽しみの一つは食事である。昼の部でも夜の部でも3〜4時間の長丁場。食事をしながら笑いを堪能するのが粋というもの。寄席の売店にはお弁当が用意されている。助六寿司などが定番中の定番。もう一つのお薦めは、デパ地下での事前調達。寄席の近くにはデパートが多い。食品売り場では、お弁当は選り取り見取り。好みの美味い弁当を手にいざ寄席に出陣!ただしアルコールは寄席によって禁止のところもあるのでご注意を!




[協力]
公益社団法人上方落語協会、一般社団法人落語協会、公益社団法人落語芸術協会

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