SANZUI vol.02_2013 autumn

特集 色

「赤」の衣装 ワダエミ 衣装デザイナー

映画の中で私がデザインした「赤」の衣装には、三つの思い出がある。

黒澤明監督の「乱」のトップシーンは、最初、使者の衣装は濃紺の直垂であった。ロケ場所は姫路城、六月の緑の樹々の中、馬上で急を告げる使者には見えない。とっさに私は「赤」の直垂(ひたたれ)に変更した。この「赤」の直垂に代ったことによって「乱」を告げる使者となったのである。

二番目に赤を意識して使った衣装は、ピーター・グリナウェイ監督の「プロスペローの本」である。サー・ジョン・ギルグッドが着る赤のマントは「現在」を表現する。過去を表す黒、未来を表す青と共に重厚なマントには、動物、植物、数学、時間、哲学、天文学をも内在する赤のマントとなった。

三番目の赤の衣装は、張芸謀(チャン・イーモウ)監督の「HERO」である。この映画は秦の始皇帝に対するテロリストの物語である。何が眞実の話かを表現する為に、衣装を色で語った。赤、青、緑、白、各々の色の衣装。マギー・チャンが着た赤のシルクジョーゼットは、紅葉したポプラの葉が散り舞う中で最も印象に残るシーンとなった。


PROFILE 1937年、京都府出身。1955年京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)卒業。1986年「乱」58回アカデミー賞最優秀コスチュームデザイン、1993年「エディプス王」45回エミー賞、最優秀衣装デザイン賞他受賞多数。

「青」の音楽 吉村栄一 編集者/ライター

日本語の「青」はさまざまな意味を持つ。「青二才」など、否定的な意味での未成熟、発展途上の「青」も、「青春」という単語になると一転して肯定的な色を帯びる。古代中国で春は青、夏は赤~と色づけされていたことから生まれた「青春」だが、日本の歌でいかに「青春」という言葉が入った前向きな楽曲が多いことか。藤山一郎の「青い山脈」などもこの系譜。Charaの「青」など、自然や地球の豊かさや希望を「青」に例える歌も多い。幾多の「青い鳥」系の歌も同様だ。

その一方、「青」はときに絶望や憂鬱の色としても多くの歌のテーマとなってきた。元ちとせの「青のレクイエム」や浜田省吾の「青の時間」などがそう。andymoriの「青い空」のように、この憂鬱系と前述の自然系を融合させた合わせ技の曲もいい。

そして、この青の複雑な意味合いは英米の楽曲でも同様であるが、それでもプレスリーの「ブルー・ハワイ」のようなポジティヴな色合いよりも、やはり英語の「ブルー=憂鬱」という視点で歌やタイトルにつけられることが多いようだ。バンドの中心人物が自殺したことを知った月曜日のことを歌った、ニュー・オーダーの「ブルー・マンデー」などその典型だろう。


PROFILE 1966年福井県生まれ。月刊誌『広告批評』(マドラ出版)編集者を経てフリーランスの編集者/ライターに。主な編・著書は『風雲巨人軍』(日本テレビ)、『これ、なんですか?スネークマンショー』(新潮社)、『いまだから読みたい本‒‒ 3.11後の日本』(小学館)など。

朽ちていくもののうつくしさ「亜麻色」 山本二三 アニメーション美術監督

亜麻色(あまいろ)というとまず浮かぶのは「亜麻色の髪の乙女」。金髪なのだけれど派手すぎない感じがして、響きのいい色名ですね。僕が一番好きなのは、植物が枯れていくときの色。枯れた植物は、茶色に近い朽葉色から白っぽく透けたような色になっていきます。それが亜麻色です。光を浴びたような美しい色は、何度も試してやっと出せる色。青々とした緑の中にこの色が少し入るだけで、絵がぐっと豊かになります。

昔はバーミリオンやチャイニーズオレンジのような、もっと鮮やかで強い色が好きでした。転機は大きな手術。全身麻酔から覚めて、目に浮かんだのが亜麻色でした。土や植物の色は、実家が農家だった僕の原点。それ以来、中間色と呼ばれるような自然の色に魅力を感じるようになりました。

現在、新井満さんの写真詩集『希望の木』のアニメ映画化に取り組んでいます。この物語から多くのことを学んだ。何かが朽ちて初めて新しいものが生まれ、死は終わりではないこと。『もののけ姫』(1997) の森のモデルとなった屋久島の倒木も、養分となって新たな若木を育てます。ものの朽ちていくさまに僕が惹かれるのは、その先に未来や希望を感じるからです。(談)


PROFILE 1953年、長崎県五島市出身。「天空の城 ラピュタ」(1986)、「火垂るの墓」(1988)、「もののけ姫」(1997)など、美術監督として数々の名作に携わる。2006年、アニメーション映画「時をかける少女」で第12回AMD Award'06大賞/総務大臣賞を美術監督として受賞。五島ふるさと大使。京都造形芸術大学客員教授。東京アニメーションカレッジ専門学校講師。近著『山本二三風景を描く』(美術出版社)。

色を想像して楽しむ「白黒」写真 プロマイドのマルベル堂

これまでにマルベル堂では2600 人以上のタレントや歌手を撮影してきました。プロマイドは昔も今も子供の代表という気持ちでずっと撮影しています。先輩からは芸術的な写真は一切考えるなと厳しく教えられました。あくまでも子供の視点。ア イドルお決まりの人差し指をアゴに当てて首をかしげるポーズなども子供が手や指先も見たいだろうという思いからです。

今でこそプロマイドもカラーですが、昔は全て白黒写真でした。ライティングも今のようにフラットではなく、白黒で立体感や質感が際立つようにとスポットライトを前髪から頭にかけて、そして肩に当てて光を作っていました。ハイライト7分、シャドー3分というのが、白黒プロマイド写真の画面構成の基本です。

女性の顔は、ディテールをあまり出さずに飛ばし気味に白っぽくプリントしました。印刷ではなく、一枚一枚手焼きですよ。手間はかかりましたが、まるでアイドルが目の前に浮き出てくるように感じられたはずです。白黒は色がない分、見る人がいろいろな想像を膨らませることができます。見ていて飽きませんし、いつ見ても新鮮に見えます。白黒のプロマイドの美しさを是非もう一度味わって欲しいなあ。(談)


PROFILE 俳優やアイドルなどのスターの写真『プロマイド』の撮影・販売をする老舗。1921年(大正10年)東京浅草に「マルベル堂」を浅草仲店に創業。これまでに撮影したスターは約2,600名。現在保有しているプロマイドの種類85,000版。



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