SANZUI vol.02_2013 autumn

特集 色

沢田祐二 舞台照明家 テーマをしっかり掴んでいれば
自ずと照明や色の
イメージは生まれます

Photo / Ko Hosokawa

舞台の印象は役者や音楽の素晴らしさもさることながら、照明の美しさや意外性、そして色も重要な要素の一つ。舞台照明家として長年第一線で活躍し続ける沢田祐二さんに舞台にあてる光と色について話しを伺った。

「色についての僕の基本的な考え方は二つ。一つは、舞台が綺麗であること。もう一つは、舞台のテーマと必ず絡まっていること。綺麗なだけではなく、ドラマティックでなければならない。ただし何でも色を付ければいい訳ではない。極端に言うとドラマを感じさせる場面だけでいい。そして色と光の強弱、方向、光と舞台との一体感、そういうもので照明を構成する。劇団四季の『ジーザス・クライスト=スーパースター』でも前半に色はほとんどなく、最後だけドラマティックに色を使いテーマを際立たせました」

劇的な色の変化は気持ちを高揚させ、舞台をより印象的にする。色の使い方に決まりごとなどはあるのだろうか?

「色は人の気持ちや感覚に訴えかけます。それぞれの色が与えるイメージがある。しかし私はそうした概念にとらわれることなく、ドラマで感じたことを光と、必要であれば色で表現すべきだと思います。一般的には夜は青で表現しますが、赤い夜があってもいい。悲しいことを黄色で表現することもある。色彩心理学にとらわれることなく色は決められるべき。しかしそこには当然、劇としてのリアリティが必要です」

沢田さんの照明や色についての考え方はとても自由でフレキシブルだ。その原点はどこにあるのだろう。

「若い頃日生劇場で関わったドイツオペラの魅力と照明技術に憧れて、1年間ドイツに留学した。一番勉強になったことは、素晴らしい芸術監督のもとで芝居のテーマが統一されていたこと。そして多様性とフレキシビリティーが誰にも認められ、常に新しい創造が生まれていました。これが今でも僕の原点。芝居でもミュージカルでも照明の考え方は同じ。何がテーマで何を伝えたいのか、それをプレゼンテーションするのが舞台。テーマをしっかり掴んでいれば、自ずと照明や色のイメージは生まれます。劇場によっては、デザインを行う上でいろいろと制約がある。もっとも制約が多いほど燃えるものがありますが。この新国立劇場は使い勝手や設備が良く考えられていて、オペラ『鹿鳴館』では新作の生みの苦しみはあったものの、思い通りに光と色を構成できました。これからも常に創造の現場で光と色を求め続けて行きたいです」


PROFILE 東京都出身。ミュージカル、オペラ、バレエ、演劇等幅広いジャンルで照明デザインを行う。『キャッツ』『李香蘭』『エビータ』といった劇団四季のミュージカル、オペラ『ダフネ』(東京二期会)『鹿鳴館』、バレエ『シンデレラ』『椿姫』など新国立劇場のオリジナルも数多く手掛ける。現代演劇では、『シャンハイムーン』(こまつ座)で第18回、『NASZA KLASA』(文学座アトリエの会)で第20回読売演劇大賞優秀スタッフ賞受賞。公益社団法人日本照明家協会会長。

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