PLAZA INTERVIEW

vol.013「環境問題啓発のベアフットコンサートを続ける」

爽やかで美しいハーモニーのデュオ「BREAD&BUTTER」を、弟の岩澤二弓と1969年に結成。自身が育った湘南のイメージをサウンドにして、幅広い年齢層のファンに受け入れられてきた岩澤さん。CMソングやナレーション、テレビ番組のテーマ曲なども数多く手がけてきた。一方で、その美しい湘南の海を美しいまま子どもたちの世代に手渡したいと、娘のAisaさんが生まれた1981年から続けている「ベアフット」コンサートの活動。海岸に落ちているゴミをみんなで拾い、はだしで歩けるようになった浜辺で音楽を聞こうと始めた活動が全国に広がり、99年には「ベアフット協会」(名誉会長 : 加山雄三、会長 : 岩澤幸矢、理事 : 南こうせつ、かまやつひろし、野口健他)を設立し、07年にNPO法人になった。「いまや地球規模で環境危機を考える時代」と訴え続ける岩澤さんの情熱のみなもと、音楽活動の原点などについてCPRA広報委員の松武秀樹委員長がうかがった。
(2008年09月05日公開)

Profile

ミュージシャン
岩澤幸矢さん
1943年東京生まれ。父親が大船の松竹撮影所に勤めていた関係で湘南に育つ。弟の二弓(ふゆみ)と「BREAD&BUTTER」を結成して 1969年にデビュー。以来、現在までに37枚のシングルと27枚のアルバムをリリース。美しいメロディとハーモニーで多くのファンを魅了し続けている。スティービー・ワンダー、かまやつひろし、井上陽水、松任谷由実など、内外のミュージシャンとの交流も幅広い。はだしで歩ける海岸を子どもたちに伝えていこうと、1981年から「ベアフットコンサート」を全国各地で開催。99年には、音楽を通じて環境問題の啓発につとめる「ベアフット協会」を設立し07年にNPOとなる。
http://www.bread-n-butter.net/

音楽を生み出す湘南の魅力は

013_pho01.jpg ―― 岩澤さんといえば湘南の海とは切っても切れない縁がありますが、湘南の魅力って、どういうところだと思われますか。 あまり細かいことにこだわらないようなところに魅力がありますね。たとえば、約束もしていないのに誰かの家に飲みにいったり食事にいったりを平気でできちゃう。それでもOKみたいなところが、湘南人の気質っていう感じですね。

―― フレンドリーっていうことですね。すぐ仲良くなれるような。 年齢差があまり関係ないから、大人も子どもも一緒になって話していられるような。そういうところは、東京なんかにはあまりないんじゃないでしょうかねえ。

―― そのへんを音楽と結びつけて考えると、キーワードは何でしょうか。 おおらかで、ハイカラってことかな。音楽でいうと、プレスリーが僕の音楽のもとで、プレスリーを好きなのは加山雄三さんなんです。その加山さんの家から僕の家って1㎞ぐらいしか離れてなくて、僕が中学生のころ、加山さんの家からはドラムやエレキの音が聞こえたりしてたんです。その音を外の道から聞いていま した。それと父親が松竹の映画監督だったので、ハイカラだったんです。お酒飲んだりするといつも外国の歌をうたったりしていて。そこに最初の音楽との出会いがあったんですね。

―― すると、まわりの環境に音楽があった。 その後は、FENを聞いて洋楽に入っていきましたね。だから、小さいころから洋楽には親しんでいたんです。

環境を守る「ベアフット」の活動は

―― 湘南の海を守る活動として「ベアフット協会」を20年以上続けていらっしゃいますが、そういうことを始めるきっかけは? 娘が生まれたのが1981年なんですけど、そのころ、あまりにも海がゴミで汚れていたんですよ。生まれてくる子どもにこんな海じゃかわいそうだなって思って、かまやつひろしさんとか集めて、「一緒に掃除しない?」ってビーチクリンアップの後、ベアフットコンサートをやったんです。当時はまだ行政の態勢ができていなかったんですけど、10年ぐらいたって、やっと行政も海岸漂着ゴミの回収に乗り出したんです。91年から茅ヶ崎で「あなたが流した汗と拾ったゴミが入場券」ってことで、「海辺で、裸足で、音楽を楽しもう」というビーチクリーンアップと無料コンサートのベアフットコンサートを始めたんです。それが全国に広がっていったんです。

013_pho02.jpg ―― ミュージシャンからミュージシャンに伝わっていったような感じですか。 そうですね。杉山清貴君も同じ想いで、京都丹後半島で「はだしのコンサート」を始めたんです。僕も音楽をはじめて来年で40周年だから、いろんな人を知ってるんで、協力してくれるミュージシャンに声をかけるのは大変なことじゃなかったんです。そういう意味では、みんな一緒になってやってくれたし。続けていくのは大変だったけど。

―― いまエコや環境問題がいろんな形で話題になっていますが、岩澤さんはこれからも音楽を通じて訴えていこうと? 最初は、ビーチクリーンアップっていう言葉の認知度も低くて、「コンサートをやるから」ってお客さんを集めたんです。いまは日本だけでなく、世界中のボランティアが海岸漂着ゴミを拾っています。だけど、ボランティアが拾うゴミは全体の1%に満たないともいわれていて、国や世界規模でいっせいに取り組まなきゃいけない時代になったと思います。政治家がもっとかかわらないとだめな時代です。環境保護に本気で取り組む政治家を、僕らが本気で選ぶことが必要ですね。環境保護を訴えるだけでなく、現実に行動を起こすことがミュージシャンにも必要だと思う。このままでいくと子どもたちの未来は暗いよね。だけど、素敵な未来がある、希望があるよってことを伝えるのが音楽の役割だと思います。楽しみながら環境保護に取り組むっていうベアフットスタイルは今後も変わらないでしょう。

―― きれいな海岸はあってあたりまえってみんな思ってるかもしれないけど、きれいにすることはみんなでやらなくちゃいけないことですよね。 みんなでやっていきましょうよ!海岸のゴミは、海に遊びにきた人が出すものって思いがちですが、実はその7割は川から流れ着くものなんです。だから、街のゴミを減らすことで海のゴミも減る。きれいな海岸を守るためにも、街をきれにしなくちゃ。僕は、海岸クリーンアップの活動から、色々な環境保護の取り組みを知りました。環境問題はすべてつながっていて、おまけに解決方法がひとつではないんです。ただ、いまみんなで取り組むべきことは、温暖化防止CO2削減だと思います。海面上昇によって海岸そのものが浸食されているとか、僕もいったツバル国が水没するとか、もっと怖いことが現実になってきています。だから、環境を考えれば、温暖化を食い止めるためにすごく大勢の人ががんばらないと危ない状況です。臨界点をこえてしまうと大変なことになってしまう。それを一般の人も知ってほしいと思っています。

ミュージシャンとの多彩な交流

―― ミュージシャンといえば、岩澤さんはスティービー・ワンダーや井上陽水、松任谷由実など、多くの人たちと交流がありますよね。 そうですね。僕らが1973年にイギリスでレコーディングしたとき、プロデューサーの友だちがスティービーのエンジニアで、紹介されて彼と知りあったんで す。ちょうど「スーパースティション」が大ヒットして、彼がスターになったときです。その後、僕らもスティービーのスタジオにいったり、彼が日本にきたときに会ったりと交流が続いているんです。僕と弟がお互いにソロのアルバムをつくろうってなったとき、僕がスティービーのところにいって「何か曲をくれないか」ってもらったのが「I just called to say I love you」だったんです。ところが、それを細野晴臣がアレンジして、ユーミンが詩を何回も書き直してくれてOKになった時点で、スティービーのほうから「映画に使うからちょっと待ってくれ」っていってきたんです。それで待ってたら、なんと9年もたって「Woman in red」という映画で使われて1位の大ヒットになったんです。その直後に僕たちも日本語で歌ったんだけど、誰も知らないですよね(笑)。その後もいろいろあって、別の曲をスティービーに書いてもらったりしています

013_pho03.jpg ―― 娘さんのAisaさんもミュージシャンになって、「ベアフットコンサート」など岩澤さんと活動をともにすることも多いですよね。 彼女のためにベアフットをはじめたんですが、Aisaの20歳の誕生日がちょうど地元、鵠沼のベアフットの日で、そのときにステージから初めてこの話をしたんです。それを聞いて彼女自身もベアフットに主体的に関わりたいと思ったようです。次世代のベアフットをささえてくれるのはうれしいですね。

―― 父親としては、心配事がたくさんあるんじゃないですか。 ミュージシャン同士から生まれた子だから、音楽の耳年増ですね。音楽の才能はわりとあるんじゃないかと思ってるんです。ミュージシャンのうけが良くて、僕世代のミュージシャンから「一緒にやって!」って誘われることは多いですね。ただ、彼女のスイートスポットがどこか、まだわかっていないなっていう感じですね。今はとにかく、いい音楽を残していくっていうことを彼女が思っていれば、ミュージシャンとしてずっと続けていけるんじゃないかと思っています。

―― 父親としては、あまりうるさいことはいわない... 僕なんかより音楽の才能あるから。僕なんか何もないですから。いや、ほんと(笑)。音楽教育も全然受けてないし。そういう意味では、Aisaは音楽教育を 受けているし、音に対する感性とかは、けっこういいものがあると思います。親からいうのも変ですけど。

―― 湘南を拠点として環境を大切にする「ベアフット」の音楽活動は、今後も続けていく予定ですか?

013_pho04.jpg 10月12、13日は、「夢の島ベアフットフェスティバル」を夢の島公園で、10月18日は片瀬江ノ島海岸で「ベアフットくげぬま」を開催します。ぜひ来てください!僕はいま何か、「目覚める時代」のような気がするんですよ。みんなが気がつかないといけない時代。本当に大変なときなんだと訴えて、世界をより良く変えていく。そんな声を上げる頼もしいリーダーや人びとのなかの、ひとりではいたいなと思っています。

―― やはり子どもたちには、ちゃんとした環境を手渡したいですよね。今後もぜひ、続けていっていただきたいと思います。今日はありがとうございました。

(2008midsummer 横浜港を一望するbar「StarDust」にて)

「夢の島ベアフットフェスティバル~Wish Flower2008~」
地球温暖化防止と環境保護意識の啓発を目的に開催されるチャリティーイベント。「環境教室」「体験ワークショップ」「バザー"もったいない市"」などのほか「夢の島ベアフットコンサート」も開かれる。
開催日時 2008年10月12日(日) 11:30~17:00(予定)
     2008年10月13日(月) 11:30~19:00(予定)
開催会場 東京都夢の島熱帯植物館および周辺特設会場

ベアフットコンサート
ナビゲーター:岩澤幸矢 Aisa
ゲスト出演者:ブレッド&バター、南こうせつ、加山雄三(スペシャルコメンテーター)
他ゲスト多数公演日:2008年10月13日(月)
開場:15:30
開演:16:00
会場:東京都夢の島熱帯植物館 芝生広場
全席指定:2,500円(税込・カーボンオフセット料金含む)
雨天決行 / 荒天中止

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